自己破産の流れは?気になる期間と費用について解説
自己破産という制度をご存じでしょうか?自己破産は、破産宣告によって抱えている負債の返済をしなくてもよくなる、というものです。
どんな人でもいいというわけではないのですが、「借金の総額が100万円を超えている」や「返済しても返済しても一向に借金が減らないと感じている」、「失業して借金返済の見通しが立たない」といった条件に当てはまる人であれば、自己破産を相談することで借金を減らすことができる可能性があります。
しかし、自己破産にはマイナスのイメージを抱いている人も少なくありません。もしかしたら、「全てのものを失ってしまう」と考えているのではないでしょうか?しかし、実際にはすべてというわけではないのです。借金に苦しむ人にとっては、新たな生活を始めるための最善の手段となりうるでしょう。
自己破産は、状況によって手続きの内容や必要な期間が異なります。この記事では、自己破産がどのような流れで進んでいき、どのくらいの時間がかかるのかを解説します。場合によっては、その期間を短くできる方法も実はあるので、その点についても解説していきます。
自己破産の種類
一口に自己破産といっても、実は手続きの違いから、
・管財事件
・少額管財事件
・同時廃止事件
の3つの種類に分けられます。分けられる基準になるのは、借金がどのような状況かという点と、保有する財産の額などです。それぞれの内容について、解説します。
・管財事件
財産を一定以上の額保有している、あるいは借金をして自己破産に至るまでの経緯に問題があると判断された場合、この手続きをされます。問題というのは、ギャンブルが原因で借金をすることになったなど、自己破産を認めるかの確認が必要な場合です。財産が一定以上ある場合は、一定額を残して没収されます。さらに、破産管財人に支払われる報酬となる、予納金を事前に納めなくてはいけません。
・少額管財事件
裁判所のうち、一部だけで可能な手続きで、管財事件の予納金を少額にしたものです。
これが可能な裁判所でも、さらに債権者数が少ないこと、借金が複雑な状態ではないこと、申立は必ず弁護士に依頼しなければならないなど、適用されるにはいくつかの条件があります。
※但し、司法書士に依頼して、書類作成などの様々なサポートを受けることは可能です。
・同時廃止事件
財産がほとんどなく、債権者に対して特に分配するものがない場合は、この手続きを行います。破産管財人が必要ないので報酬が必要なく、財産の調査や分配なども行われないので手続きにかかる時間も短く、他の手続より安い費用で行うことができます。
どの手続きになるかで、費用や期間も大きく異なります。しかし、個人の場合は特に高額な財産や複雑な債権がない限り、ほとんどが同時廃止事件になるでしょう。
自己破産の手続き完了までの一般的な期間と流れ
自己破産をする場合、手続きが完了するまではどのくらいの期間が必要なのでしょうか?また、その際はどんな流れで手続きが進められていくのでしょうか?必要な期間と、その流れについて解説します。
自己破産手続きの種類と免責許可までにかかる期間
自己破産の手続きを終えるまでにかかる期間は、状況によって前後するので一概にはいえません。また、手続きの種類によっても大きく変わります。一般的にかかる期間の目安としては、下記のようになっています。
自己破産手続きの種類 | 手続き完了までの期間 |
---|---|
管財事件 | 6~12カ月 |
少額管財事件 | 4~6カ月 |
同時廃止事件 | 3~4カ月 |
どの手続きであっても、大まかな流れは変わりません。ただし、管財事件および少額管財事件の場合は、財産を売却・換価して債権者に分配するなどの手続きがある分、同時廃止事件と比較すればどうしても必要な期間は増えてしまいます。
自己破産手続きの流れ
では、具体的な流れについて確認してみましょう。自己破産の手続きは、このような流れで行われます。
1.司法書士等に依頼する
2.依頼を受けてもらい、受任通知が送付される
3.申立に必要な書類を作成する
4.裁判所に申立書を提出し、自己破産手続きの開始決定
5.破産管財人による財産の管理・処分
6.債権者集会
7.免責の決定
上記のうち、5と6は管財事件・少額管財事件の場合のみ行われ、同時廃止事件では省略されます。
では、それぞれの詳しい内容と、それにかかる期間の目安について解説します。
1.司法書士等に依頼する(約1~2週間)
自己破産することを決めたら、まずは専門家である司法書士等に相談するところから始まります。その際は、インターネットなどで検索してみるといいでしょう。ただし、どの事務所でもいいわけではありません。それぞれ専門にしている分野があることも多く、どこでも借金問題に明るいというわけではないのです。自己破産を含めた、債務整理を得意とするところを探してみましょう。
相談にいくときは、現在の借金の状況やおおよその収入、支出および保有している財産などを確認していきましょう。依頼をする前の面談で、そのことを確認されます。状況によっては、自己破産ではなく別の債務整理の方法を勧められることもあります。
また、費用がいくら必要になるかも、面談のときに確認してください。その際に、管財事件として扱われるか、同時廃止事件として扱われるかも判断できます。保有している財産がある場合は、この時に伝えておきましょう。
自己破産手続きをすると決定して依頼したら、着手金を支払います。目安としては、20万円前後かかるでしょう。ただし、ほとんどの事務所では一括ではなく、分割払いが可能です。詳しくは次で解説しますが、依頼した時点で借金の返済が停止するので、その分を着手金の支払いに回すことができるでしょう。
2.依頼を受けてもらい、受任通知が送付される(即日)
依頼すると、司法書士等から債権者に対して、受任通知が送られます。これは、依頼を受けて自己破産手続きを開始します、ということを知らせるためのものです。
この受任通知が送られると、その手続をしている間は借金の取り立てをすることができないと、貸金業法などで定められています。その効力は、手続きが終了するまで続くので、それ以降は借金の返済をしなくてもよくなるのです。それ以降は、毎月の借金の返済分で、着手金を分割で支払えるようになるでしょう。また、取り立てがなくなることで精神的な負担からも解放されます。
3.申立に必要な書類を作成する(2~3カ月)
裁判所に申立を行う際は、様々な書類を提出することになります。実は、これが最も手間のかかる部分です。書類そのものの量も多いのですが、書類を作成するのに必要な資料も多く、専門知識がなければ作成するのは難しいでしょう。基本的には、司法書士等が作成するのですが、必要な書類などを求められた場合はそれを用意しなくてはいけません。裁判所に申立を行ってしまえば、それほど自分でやることはなくなるので、この書類作成が最も難しいといえるでしょう。
4.裁判所に申立書を提出し、自己破産手続きの開始決定(2~3週間)
無事に書類を作成したら、裁判所に提出します。そのときは、依頼した専門家と依頼者が裁判官と面接を行い、負債がいくらあるのか、資産はどのくらい保有しているのか、なぜ自己破産をすることになったのか、といったことを説明しなくてはいけません。場合によっては、本人が出席せずに専門家が代理で説明してくれるケースもあります。
面接の結果と、提出された書類に問題がなければ自己破産手続きの開始決定が裁判所から出されます。その際は、3つの手続のうちどれになるのかも決定します。同時廃止事件になれば、すぐに免責手続へと移行するため、スピーディーに進みます。
5.破産管財人による財産の管理・処分(管財事件:3~6カ月、少額管財事件:2~3カ月
管財事件になることが決定した場合、裁判所によって破産管財人が選任されます。これは、主に弁護士が選任されます。また、報酬を予納金として裁判所に納めなくてはいけません。
管財人が選任されると、再び依頼した専門家を交えて依頼者と面接が行われます。ここで、保有している財産について確認されます。
その後、破産管財人が財産を管理し、現金化して債権者への配当を行います。また、他に財産がないかの確認も行われます。財産に関して、疑わしい点があれば調査も念入りに行われるので、その分必要な期間も長くなります。
6.債権者集会(1日)
破産管財人が決定して、3カ月ほど経過したら債権者を集めて、集会を行います。その際は、債権者に対して今回の自己破産の概要や財産からどの程度の配当があるのか、ということを破産管財人から説明されます。1回目で、すでに財産が現金化されていればそこから配当を出して終わるのですが、財産に不動産のような現金化に時間がかかるものが含まれている場合は、後日また集会を開催することになるので、その日程を指定して再度行われます。
7.免責の決定(少額管財:2~4カ月、それ以外:3~6カ月)
ここまでの手続きが完了したら、裁判所に司法書士などの専門家と一緒に破産者が出頭します。そこで、免責審尋という面接を行います。その内容は形式的なもので、これまでの内容の確認だけというのがほとんどです。しかし、何か不明な点がある場合などは質問されることもあるので、それに回答しなくてはいけません。それが終わって、約2週間が経過すると裁判所から免責許可決定が出されます。これで、自己破産の手続きは完了となり、以降は借金の返済をしなくてもいいことが正式に認められます。
自己破産の手続き費用
自己破産の手続きをするには、費用が掛かります。その費用がいくらかかるのかは、手続きの種類によっても変わります。また、裁判所に納める費用と、司法書士などの専門家に支払う費用があるので、専門家に依頼して手続を行う場合と、自分で手続を行う場合ではかかる費用が異なります。それぞれ、どのくらいの費用が掛かるのかを解説します。
専門家に依頼をする場合の費用
ほとんどの方は、法律の専門家である司法書士等に依頼して、自己破産手続きをするでしょう。その場合にかかる費用(着手金)の目安は、以下の通りです。
費用内訳 | 管財事件 | 少額管財事件 | 同時廃止事件 |
---|---|---|---|
司法書士費用 | 25万円~30万円 | 20万円~40万円 | 20万円~25万円 |
弁護士費用 | 30万円~80万円 | 30万円~50万円 | 25万円~30万円 |
裁判所費用 | 50万円~ | 20万円~ | 1万円~3万円 |
費用合計 | 80万円~ | 50万円~ | 30万円前後 |
個人での自己破産は、管財事件になることはめったにありません。もし、管財事件として扱われる場合は、負債額によって裁判所費用は大きく変わってきます。ただし、負債額が5,000万円未満なら裁判所費用は50万円です。それを超える場合は、事前に確認しておきましょう。
自分で手続きを行った場合の費用
自分で手続きを行う場合は、上記の金額のうち裁判所費用だけが必要となります。つまり、費用の目安としては手続きごとに、下記のようになります。
管財事件 | 少額管財事件 | 同時廃止事件 | |
---|---|---|---|
必要な費用 | 50万円~ | 20万円~ | 1万円~3万円 |
費用を節約したい場合は、自分で手続きするという選択肢もあると思います。しかし、複雑な書類も多いので、間違いがないようにするためにも専門家に依頼することをお勧めします。費用を節約したいときは、弁護士より費用が安く済むことが多い司法書士に依頼するなどの方法を検討してみましょう。
自己破産の手続きを早く終わらせる方法
自己破産の手続きには、かなりの時間がかかります。それをなるべく早く終わらせたい場合は、以下のような点に気を付けて手続きを進めていきましょう。
書類を正確に早く集める
自己破産手続のほとんどは、必要な書類を集めることです。専門家に相談をする段階から免責決定までの間には、様々な書類が必要になります。それに不足があると、申立を却下されてしまったり、再提出を求められたりすることになります。その書類がすべてそろうまでは手続きが終わることがないので、いつまでも続きます。また、書類を取得したつもりが、必要な項目が抜けているせいで取得し直しになることもあるでしょう。必要といわれた書類は、それが何のために必要なのかを理解して、正確に素早く集めるようにしましょう。そうすれば、その分手続きも早く進めることができます。
手続きに必要となる書類
手続きに必要な書類を事前に把握しておくと、素早く用意することができるでしょう。自己破産に必要な書類というのは、現在の収入に関するものや保有している財産を証明するものが中心です。具体的に必要な書類は、
・申立を行う直前2~3カ月分の給与明細
・過去1年分の賞与明細
・1~2年分の源泉徴収票
・課税証明書、もしくは非課税証明書
・確定申告をしている場合は、過去1~2年ぶんの確定申告書及びその資料
・退職金に関する書類
・保有しているすべての銀行口座の利用履歴
・加入している保険についての資料
・保有する自動車に関する資料
・保有する不動産に関する資料
・すべての賃貸借契約に関する契約書
・購入もしくは売却時の価格が20万円を超える財産の資料
・過去1~3か月分の家計簿及び公共料金領収書
・株・FXなどをしている場合はそれに関する資料
等のうち、当てはまるものです。場合によっては、同居している人の分も同様の書類が必要になることがあるでしょう。
自己破産の申請をするメリットとデメリット
自己破産の申請をすると、どのようなメリットやデメリットが生じるのでしょうか?その具体的な内容について、解説します。
メリット① 全ての債務の支払い義務が免除される
最も大きなメリットは、すべての債務で今後返済する義務が免除されるということです。債務整理には、他にも任意整理や個人再生などの手続がありますが、どちらも債務を減額することはできても、返済は続けることになります。しかし、自己破産の場合はその必要がなく、残っている債務の返済が全額免除されるのです。
メリット② 破産手続きを開始してからは、強制執行の心配がない
借金の返済が滞ると、債権者によって裁判を起こされて給料を差し押さえられることがあります。しかし、自己破産の申立をして裁判所から破産手続きの開始決定が出されると、強制執行手続きは全て停止になります。そうなると、既に差し押さえられている給与等も差し押さえが解除され、全額を受け取れるようになるのです。
メリット③ 一定の財産を残すことができる
自己破産をすると、すべての財産がなくなると思われがちですが、実は自由財産と言われる最低限の財産は残すことができます、具体的には、99万円以下の現金や20万円以下の財産は残しておくことができるのです。そのため、家具や家電、衣類などのほとんどは残すことができるでしょう。
デメリット① 失ってしまう財産もある
一定の財産は残すことができるのですが、それを超える財産がある場合は失われてしまいます。例えば、マイホームなどの不動産を所有していれば、それは処分して債権者への配当になってしまいます。また、価値が20万円を超える財産も同様です。この財産には、証券や保険金の解約返戻金、預貯金なども含まれます。
デメリット② 保証人がいる債務に関しては、返済の請求をされてしまう
債務の中には、保証人や連帯保証人が設定されているものがあります。そのような債務は、返済の免除を得た時にそちらへと請求されてしまいます。なぜなら、免責はあくまでも借金の返済をしなくてもいいというだけなので、借金そのものがなくなるわけではないからです。保証人などには、自己破産をすることをあらかじめ伝えておいた方がいいでしょう。
デメリット③ 信用情報のブラックリストに登録される
信用情報機関のブラックリストに登録されてしまうので、それ以降は新たな借金をすることやクレジットカードを発行すること、ローンを組むことが難しくなります。ほとんどの業者では、ブラックリストに入っていると契約を断るでしょう。
ただし、ブラックリストには永遠に入っているわけではありません。最低でも5年、一部の信用情報機関には10年登録されることになっています。
自己破産をすることで、このようなメリット・デメリットが生じます。中には、デメリットが気になる人もいるでしょう。しかし、借金を放置しておくといつまでも利息が増えてしまい、返済がどんどんと困難になってしまいます。デメリットについて気にするよりも、早めに借金の返済を免れることが重要なのではないでしょうか。
自己破産の申請をする人の割合
自己破産をしている人は、どのような人でしょうか?参考として、2017年に自己破産をした人の割合を、いくつかの要素から見てみましょう。
まず、年代別の比率から見てみましょう。年代別にすると、このような割合になっています。
年代 | 20歳未満 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代以上 | 不明 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
割合 | 0% | 7.35% | 19.55% | 26.01% | 22.78% | 16.4% | 7.51% | 0.4% |
また、男女で分けた場合、男性が56.79%、女性が43.21%と、男性がやや多いもののそれほど大きく違うわけではありません。
続いて、借金をした原因毎の割合を見てみましょう。原因別では、以下のような割合です。
原因 | 生活費 | 医療費 | 事業資金 | 失業等 | 借金の返済 | 保証人 | 生活用品購入 | 住宅購入 | 減給の補填 | 浪費・遊興費 | 教育資金 | カード支払い | ギャンブル | 債務の肩代わり | 名義貸し | 冠婚葬祭 | 株式・会員証等の投資 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
割合 | 61.47% | 22.70% | 17.37% | 16.32% | 15.11% | 14.54% | 12.28% | 10.26% | 9.61% | 9.29% | 7.75% | 6.46% | 4.93% | 4.68% | 1.37% | 1.37% | 0.81% |
(その他:12.04%)
自己破産の原因は、大半が生活費のためです。低所得であることを理由に、不足している分を借りた結果、自己破産となることが多いのです。次いで、医療費や事業資金のための借金が続いています。
自己破産をする人の負債額は、このような割合になっています。
負債額 | 100万円未満 | 100万円~500万円 | 500万円~1,000万円 | 1,000万円~3,000万円 | 3,000万円~5,000万円 | 5,000万円以上 |
---|---|---|---|---|---|---|
割合 | 7.51% | 45.23% | 18.99% | 17.12% | 4.04% | 6.63% |
100万円~500万円という人が最も多いのですが、100万円以下で自己破産をする人も少なくありません。生活の状況や収入によって、自己破産を考えるタイミングは異なります。負債額がいくらでも、自分で限界だと感じた時点で自己破産を検討するべきでしょう。
自己破産の申請で借金が減った人の割合
自己破産は、申立をすれば無条件で認められるわけではありません。中には、免責不許可となってしまい、借金を減らすことができない人もいます。その多くは、免責不許可事由に該当してしまった場合です。
免責不許可事由というのは、借金の原因がギャンブルや浪費、投資などが当てはまります。それ以外にも、財産を隠していた場合や、クレジットカード現金化をした場合なども該当します。そういった時は、免責の許可が下りないのです。
ただし、実際に免責不許可となることはごく稀です。通常は、反省文の提出を求められたり、家計簿の作成をしたりすることで、裁判官の判断によって免責となるケースがほとんどです。よほど悪質だったり、反省の様子が見られなかったりしない限りは、免責許可が下りるのです。
免責不許可になったり、申立が却下・棄却されたり、申立を自主的に取り下げたりして借金が減らせなくなる割合は、全体の2~3%程度です。つまり、全体の97~98%は、自己破産によって借金を減らすことができるのです。ちなみに、借金を減らせないケースの中で、免責不許可となって借金を減らせなくなる可能性は全体の0.2%程度といわれています。
このように、ほとんどのケースでは自己破産によって借金を減らすことができます。
自己破産後から信用回復までの期間
自己破産をすると、そのことが事故情報として信用情報機関に登録されてしまいます。信用情報機関は、銀行やクレジットカード会社、消費者金融などが共同で作成したデータベースで、業界ごとに3つに分けられています。銀行などが主に利用するのが全銀協、クレジットカード会社や消費者金融は、JICCかCICのどちらかを利用します。どの信用情報機関を利用しているのかは、多くの場合各社のホームページなどに記載されています。自己破産などの情報は、直接関係がなかったとしてもそのすべてのデータベースに登録されてしまいます。
この事故情報が登録されることを、「ブラックリスト入り」ともいいます。登録されてしまうと、その間はクレジットカードの新規作成や消費者金融での借り入れ、銀行でのローン申し込みがほとんど不可能になってしまいます。また、現在持っているクレジットカードも利用できなくなってしまいます。
これは、ある程度の年数が経過するまで、消えることはありません。登録が消えて、信用が回復するまでの期間は、自己破産の場合は短くても5年、銀行などが利用するデータベースでは10年ほどかかるといわれています。
自己破産によって職業が制限される期間
自己破産をすると、一部の職業には一定の期間就くことができなくなります。これは、制限職種と言われるものです。その職業は、弁護士や司法書士、宅地建物取引士、税理士などのいわゆる士業といわれるものや、古物商、生命保険募集人、警備員などが該当します。古物商には、ディスカウントストアの責任者なども該当するので、注意しましょう。
該当する仕事に就いている場合は、その期間は休業するか、もしくは資格が必要ない仕事だけをしていなくてはいけません。期間というのは、破産手続きを開始してから、免責許可が出るまでの間です。たいたい、3~4カ月程度の期間になることが多いでしょう。
自己破産手続きを自分で行うときの注意点
自己破産手続きは、自分で行うこともできます。必ず専門家に依頼しなくてはいけない、ということはないのです。自分で手続きをすると、費用は大幅に抑えることができます。しかし、その場合は注意しなくてはいけない点もあります。その点について、解説します。
まず、手続きをスムーズに進めるには、法律の専門的な知識と経験が必要です。知識も経験もなく手続を進めると、書類を作成して裁判所に提出しても、何度も書類の訂正を求められることになるでしょう。書類を提出してから、訂正を求められるまで何週間もかかることもあります。そうなると、そのたびに裁判所へと行かなくてはいけないのです。その分、手続きにかかる期間も長くなってしまいます。裁判所まで遠いという人の場合は、交通費もかかり単純に面倒にもなるでしょう。専門家に依頼した場合、書類は代理で作成してもらうことができ、不足しているものもすぐに指摘してもらえます。
また、債権者との交渉も自分で行わなくてはいけません。専門家に依頼した場合は、債権者に受任通知が送られるので、それ以降は取り立てがなくなります。しかし、自分で手続きする場合はそれがないので、自己破産の手続きを進めていく中で債権者から、残金を一括返済するように求められることがあります。場合によっては、自己破産手続きが進められる前に裁判を起こして、財産や給与を差し押さえようとすることもあるでしょう。債権者との交渉が必要になったときも、自分で交渉しなくてはいけません。しかし、専門的な知識がなければ、交渉も上手く進まないことが多いでしょう。
自己破産手続きは、95%以上の人が司法書士等の専門家に依頼しています。それだけ、自分で行うのは困難なのです。
自己破産手続きは専門家へ依頼するのがおすすめ
上記のようなリスクがあることを考えると、自己破産手続きは司法書士のような、専門家に依頼するのがおすすめです。特に、債務整理に強い専門家に依頼すれば、手続きも早く終わる可能性が高くなるでしょう。
専門家に依頼しながらも、費用を押さえたい場合はいくつかの方法があります。例えば、司法書士に依頼すると自分で行わなければいけない手続きは多少増えますが、弁護士よりも料金が安いケースが多いのです。面倒な書類作成などは代行してもらえるので、自分で行うよりははるかに楽になるでしょう。
というのも、こういった手続きをするうえで重要となってくるのが、素早い対応です。
手続きが遅くなってしまうと、その間も債権者からの取り立てや返済の催促が続きます。
確かに費用も重要ですが、精神的なストレスを考えると、専門家に依頼してスムーズに手続きを進めていくことも大事なのです。
コスト削減だけに注力するのではなく、どれだけ早急にストレスなく手続きを進めていくか、という点も考慮しましょう。
そう考えると、きちんと専門家に依頼する方が得策ではないでしょうか。
自己破産の相談実績
実際の、自己破産の相談実績について紹介します。
ケース①40代男性
・職業 会社員
・借金総額 1500万円
3人の子どもがいて、その学費や住宅ローンなどを支払っていたのですが、会社が倒産して転職し、そのせいで減給になった収入を補填するために借金をするようになりました。最初はどうにかやりくりできていましたが、子どもが成長するにつれて支出も増え、借金をするペースも早くなって気づいたら、借金をして借金を返すという状態になってしまいました。気が付いたら、借金はかなりの額に膨れ上がってしまい、返済も滞るようになって頻繁に取り立ての電話がかかってくるようになりました。
もうどうにもできないと諦めて、弁護士に相談しに行ったところ、自己破産を勧められました。自己破産については、マイナスのイメージも強かったため、色々な不安もありましたが、その点も一つ一つ丁寧に答えてもらって不安が減ったことから、自己破産手続きを進めることにしました。
依頼した時点で借金の取り立てが止まり、久しぶりに解放された気分で過ごせるようになりました。半年ほどが経過して、無事に免責決定が下りたことで、借金からも解放され安心して日々を過ごせるようになりました。
ケース②40代女性
・職業 無職
・借金総額 400万円
20代半ばで結婚して子どもを出産したのですが、5年ほど前に離婚しました。当時10歳の子どもを引取り、自身は働きながら子どもを育てていたのですが、地元に1人で住む母が体調を崩し、介護が必要になったので仕事を辞めて実家に戻ることになりました。
介護の必要があって仕事に戻れないので、収入はありません。そんな中、母が入退院を繰り返すようになったことで借金をしてしまいました。その後、母の体調が安定してきたところで仕事を見つけ、介護はヘルパーさんに依頼して働き、借金を返すことにしました。しかし、かなりの額になっていた借金はそう簡単に減らすことができず、給料の安さもあって徐々に返済のために借金をするようになっていたのです。
そんな状態が1年以上続き、もう駄目だと思ったので自己破産をすることを決意しました。費用を少しでも安くしたいと司法書士に相談しに行き、手続きについて詳しく聞いたうえで、依頼することにしました。その後、ある程度の手続きは自分で行うことになっているものの、書類の作成など面倒なところは司法書士に任せることができ、何とか無事に自己破産手続きが完了しました。それまで、返済する日が近づくたびにそのお金をどう工面するか悩んでいたのですが、そんな悩みからも解放されて安心した生活を送れるようになりました。
まとめ
・自己破産には、3つの種類がある
・同時廃止事件は、最も簡単に手続きができる
・(少額)管財事件になった場合は、手続にかかる時間も長くなり、費用も余分にかかる
・個人の自己破産は、70%以上が同時廃止事件になる
・管財事件になると、破産管財人が必要となり、その報酬も支払う
・自己破産が認められると、すべての借金の返済義務がなくなる
・すべての財産が失われるわけではなく、ある程度は手元に残すことができる
・保証人がいる借金は、保証人に請求されることになる
・信用情報のブラックリストに入れられてしまい、回復するまでに5年~10年ほどかかる
・手続きは、自分で行うこともできるがかなり複雑
・専門家に依頼するのがおすすめ
クレジットでの買い物や、軽い気持ちでキャッシングを重ねるうちに借金が知らない間に増えることは、だれにでもあることです。
支払いが無理かなと感じたら、身近な法律家である司法書士にまずは、ご相談ください。
あなたの早めの相談が問題解決へのきっかけになります。
一人で思い悩まずに、司法書士といっしょに問題解決に向けてスタートしましょう。
また、司法書士は、不動産登記や商業登記、簡易裁判所で扱う事件についての代理等をしていますので、借金問題以外の法律相談もしています。
弁護士では、敷居が高いと感じている方も、気軽にご相談ください。