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自己破産
2021.04.26

奨学金の返済ができず自己破産するとどうなる?保証人への影響についても司法書士が解説|はたの法務事務所

本来学問というのは、生まれにかかわらず、人々が平等に学ぶ機会を与えられるべきものです。しかし、子ども一人を大学まで卒業させるためにかかる費用が数千万円ともいわれるいま、家庭の経済事情によって、子どもの就学機会に差が出ているのが現状です。
そうした中で、学ぶ機会を得るために、大きな助けとなるのが奨学金制度です。
しかし、日本では現状、返済義務のない給付型の奨学金というのはごくまれで、ほとんどが奨学金という名の学資ローンになっています。

奨学金の現状

もっとも一般的な日本学生支援機構の奨学金の場合、利子がかからない第一種奨学金と、利息が付く第二種奨学金があります。例えば、大学院までの借入金額が780万円の場合、0.5%の金利では総返済金額はおよそ822万円。卒業後に20年かけて月3万4200円の返済を続けていくことになります。上限となる年利3%の場合には、総返済額は1000万円を超え、月返済額4万3000円が20年続きます。
奨学金を借りるということは、社会に出た時点で、数百万円の借金を背負っているのと同じことなのです。

奨学金の免責について

日本学生支援機構の奨学金は、一般の金融機関からの借り入れと比較して低金利ですが、卒業後に返済を延滞した場合は、年率10%のペナルティが課されます。さらに長期間延滞した場合、法的な処置が取られ、給与の差し押さえなどが発生することもあります。奨学金も借金ですので、こうして返済が滞ると、いわゆる「ブラックリスト」に載ることになります。
ただし、自己破産した場合、他の借金と同じように免責の許可がおりれば、奨学金返済の義務はなくなります。

自己破産におけるリスク

連帯保証人、保証人に債務が移る

債務における連帯保証人、保証人は、本人がその債務を返済できなくなった時、本人に代わって返済することを約束するものです。
自己破産の場合も、本人が返済できなくなったものとみなされるため、返済義務は連帯保証人、もしくは保証人へと移行するのです。

また、通常は奨学金の返還は分割となっているのですが、債務が移行した場合は残債を一括で請求されてしまいます。
そのため、連帯保証人あるいは保証人に十分な経済的余裕がなければ、自己破産する事態となるかもしれません。

クレジットカードなどの利用が一定不可能に

クレジットカードを所有している場合は、自己破産に伴って強制解約されます。
現在利用している分は支払う必要がなくなるのですが、今後利用することもできなくなるのです。
そして、自己破産をしたという情報は信用情報機関に登録され、一定期間はブラックリストに入った状態となるのです。

新規でクレジットカードを契約しようとすると、信用情報機関に問い合わせをされます。
その際に、ブラックリストに入っていると契約を断られてしまうので、その情報がリセットされるまでは使用できなくなります。

財産を手放す必要が出てくる

自己破産をすると返済の義務が免責となりますが、その代わりに所有している不動産や一定以上の価値がある財産などがある場合は、没収されて弁済に充てられます。
対象となるのは、住宅や土地などの不動産、20万円以上の価値がある財産です。
また、現金は99万円を超えた分が対象となります。

ただし、生活において必要とみなされる家電や家具などの財産や、仕事上必要になる道具などは、たとえ価値があっても処分の対象外となります。

就職において制限がかかる

自己破産の手続き中に限りますが、一部の職業や資格には制限が課されます。
その間は、該当する職業につくことができません。
また、該当する資格は取得することができず、すでに取得している場合でもその効力が停止します。
そのため、その資格が必要な仕事に従事することはできません。

制限される職業は、弁護士や司法書士、税理士などの士業や金融関連業、一部の団体企業の役員、警備員などです。
自己破産の手続きが完了すれば復権となり、制限はなくなります。

奨学金の返済が難しい場合に検討したい制度

自己破産をすると、上記のようなリスクがあります。
特に、奨学金はほとんどの場合連帯保証人などがいるので、そちらに返還義務が移行してしまうケースが多いのです。
そのため、自己破産をせずに返還できないか、まずは検討してみましょう。

日本学生機構では、奨学金の返還が難しい人へのセーフティネットとして、下記の制度を用意しています。
・「返還期限猶予制度」一定期間返還を猶予する制度
・「減額返還制度」毎月の支払額を減額する制度

まずは、このどちらかの制度を利用して返済できないか、考えてみましょう。
一時的に減収となり、返還が厳しくなった場合は「返還期限猶予制度」、月々の支払いが多すぎて返還が難しくなった場合は「減額返還制度」がおすすめです。

また、時には本人が死亡、もしくは重度の障害を負って、これ以上返還できない状態となることもあるでしょう。
その場合、連帯保証人となっているのであれば、返還を求められないように以下の制度を利用しましょう
・「返還免除」死亡時、もしくは身体・精神の重度障害によって返還を免除する制度

この制度を利用すれば、返還そのものが免除されるので連帯保証人が返済する必要もなくなります。

自己破産の前に、これらの制度を検討しましょう。

破産時に奨学金の免責を行う時の注意

奨学金の場合やっかいなのは、多くの場合、家族や親せきなどが連帯保証人になっていることです。
債務者(奨学金を受けた人)が自己破産して支払い義務がなくなったとしても、連帯保証人や保証人に支払いの義務は残るので、そちらに残額の請求がいきます。連帯保証人や保証人が支払えない場合は、債務者といっしょに自己破産手続きをすることになります。保証人がいる方は、自己破産前に保証人に相談しなくてはいけません。
なお、日本学生支援機構の奨学金の場合、万が一債務者が死亡して奨学金の支払いが滞った場合も、通常の遅延と同様の延滞金がついて、保証人に返済の督促がきます。こうして、子どもが先立った場合、年老いた両親が思わぬ多額の借金を背負うことになります。
また、保証人が死亡して返済が滞った場合も同様で、機構からの裁判で、債務者側が敗訴した事例があります。
経済情勢が不安定な中、奨学金の申し込み数は増加しています。しかし、奨学金を受けて大学を卒業しても、安定的な職を得ることが難しい情勢でもあります。将来にわたって大きなリスクを背負うことを頭に入れて、奨学金は借りるべきでしょう。
なお、病気や経済的事情など正当な理由がある場合は、一定期間返済が猶予されますので、必ず手続きをするようにしましょう。

自己破産後の奨学金取得について

両親が自己破産していた場合も、基本的に子どもは奨学金を借りることができます。なぜなら、奨学金の借主は学生となる子ども本人だからです。ただし、自己破産者は一定期間金融機関のブラックリストに登録されます。そのあいだは、奨学金を借りられたとしても、親が連帯保証人になるのは難しいかもしれません。そうした場合は、別の親族などが保証人となるか、保証機関を利用することになります。
また、日本学生支援機構には、「緊急採用(第一種)」「応急採用(第二種)」という奨学金もあります。これは、「失職、破産、事故、病気、死亡等若しくは火災、風水害等の災害等又は学校の廃止によりやむを得ず他の学校に入学することで修学に要する費用が増加したことにより家計が急変し、緊急に奨学金の必要が生じた場合」の奨学金です。どうしても必要になった場合はこうしたものを利用することも検討しましょう。

自己破産以外での債務整理方法は?

債務整理には、自己破産以外にも任意整理や個人再生などの方法があります。
自己破産だと不都合があるという人は、他の方法を検討しましょう。

任意整理は、債権者と交渉して借金を減額することを了承してもらうという方法です。
この際、減額の方法としては原則利息カットと遅延損害金のカットが主で、元金は減額せずに原則3年、最長で5年の分割払いにしてもらいます。
消費者金融などは原則利息が最大で年率20%なので、支払総額はかなり減額できます。

個人再生は、借金の元金そのものを減額できる手続きです。
借金の総額によって減額できる割合は異なりますが、原則5分の1になるのです。

例えば、総額500万円の借金がある場合は100万円まで減額できます。
その際、1つが400万円、もう一つが100万円の借金だった場合は、それぞれ80万円、20万円に減額されます。
また、100万円以下に減額することはできないので、借金総額が500万円までなら100万円になり、総額が100万円未満の場合は減額できません。

個人再生の場合は、住宅ローンを支払っている途中の自宅がある場合は、特約によってそれを除外して手続きができます。
住宅ローンを今まで通り支払う代わりに、自宅を手放さなくてもよくなるのです。
住宅ローンを整理対象に含めた場合は、担保権を行使されて自宅を差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。

任意整理が奨学金の債務整理に適さない理由

奨学金の返済に困った場合の債務整理の方法として、任意整理はあまりお勧めできません。なぜなら、効果が非常に低いからです。

先ほども言いましたが、任意整理は原則利息カットをすることで、返済総額を減額する手続きです。
そのため、金利が高ければ高いほど効果的です。
しかし、奨学金の金利は消費者金融などと比較して、かなり低いのです。
15年前は1%前後で、そこから年々下がりつつあります。
現在では0.1%前後になっているため、原則利息カットをしてもほとんど減額されません。

しかし、こんなケースの場合は…?

しかし、任意整理で奨学金の返還ができるケースもあります。
それは、他の借金があって、その返済によって奨学金の返還が難しいというケースです。
任意整理の場合は、複数の借金がある場合は整理する対象を選ぶことができるので、一部の借金だけを任意整理することもできるのです。

例えば、奨学金の他に消費者金融と銀行のカードローンでの借金があり、奨学金の返還額が毎月8万円、消費者金融が毎月3万円、カードローンが毎月2万円の返済だったとします。総額は13万円ですが、毎月返済できるのはどう頑張っても10万円という場合、まずは最も額が大きい奨学金をどうにかしたい、と思ってしまうでしょう。
しかし、消費者金融とカードローンそれぞれの債務整理を行い、毎月の支払額をそれぞれ1万円ずつにすることができれば、毎月の返済額の合計は10万円で済むのです。
それでも厳しい場合は、奨学金の「減額返還制度」を利用して奨学金の返済額も減額するといいでしょう。

このように、任意整理によって奨学金の返済も楽になるケースがあるのです。
上記のケースは一例で、それぞれの借金の総額や返済状況、収支によって最も効果的な方法、適した方法は異なります。
返済に困ったときは、まず司法書士に相談してみてください。




監修者情報
代表 認定司法書士 幡野 博文
代表 認定司法書士 幡野 博文
認定番号 第401159号 / 東京司法書士会所属 / 登録番号 東京 第1545号
40年の実績と信頼。北海道江別市出身。
昭和56年に司法書士資格を取得し、司法書士事務所を開設。以後、登記業務を主として各方面で活躍し、その傍ら身近な法律家として庶民の相談者として、様々な問題を解決。平成15年の簡裁訴訟代理関係業務の認定制度の発足に伴い、認定司法書士の資格を取得。親切・丁寧をモットーに依頼者と共に問題を解決すべく司法書士活動を展開中。
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