自己破産
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自己破産で税金を滞納した場合は?対処法やリスクを解説

自己破産は、裁判所に申立をして行う債務整理の一種です。裁判所から免責許可を得ることで、現在の借金についてはその返済義務が免除されるため、借金からは解放されることになります。
しかし、その自己破産には例外があるのです。それは、税金や社会保険料などの支払いを滞納している分です。これは借金と言えなくもないのですが、自己破産をしても免責とはならないので、支払わなくてはいけません。
自己破産で免責になるのは、借金やローン等に限られます。税金や社会保険料に関しては、自己破産をしても滞納している分を支払わなくてはいけないのです。もちろん、自己破産をした後で課せられる税金なども、納める必要があります。
ここでは、税金を滞納し続けた場合のリスクや、どうしても税金を支払えない時の対処法を解説していきます。また、自己破産ができる条件に付いても解説します。

自己破産では税金は免除されない

自己破産は、借金の返済が免除となる免責の許可を得るための手続きです。しかし、これはあくまでも、ローンや貸金業者からの借り入れ、クレジットカードの利用代金などの返済が免責となるだけです。実は、滞納している税金や保険料は、その対象外となっているのです。なぜ、免責にはならないのでしょうか?その理由について、解説します。

税金や保険料などが免責にならない理由

なぜ、税金や保険料の滞納分は自己破産をしても免責にはならないのでしょうか?それは、自己破産の内容について定めている、破産法によるものです。それには、自己破産の面積について租税などの請求権に関しては、免除されないと書かれているのです。租税というのは、国および地方公共団体が徴収する税金のことです。それについて、租税などと書かれているため、税金以外にも強制的に徴収できるものを含むとされています。そのため、税金ではない国民年金や国民健康保険料などの社会保険料も含まれているのです。
こういった、免責にならない債権のことを、非免責債権といいます。それに該当する債権は自己破産をしても、免責の効力が及ばないため支払わなくてはいけないのです。

「非免責債権」とは?

非免責債権については、破産法の253条第1項に定められています。その内の租税等の請求権には、住民税や所得税、固定資産税、自動車税などの税金や、国民年金、健康保険料等の社会保険料、そして下水処理代を含む水道料金などの公共料金の滞納分が該当します。
これ以外にも、破産者が悪意を持って不法行為を加えた場合や、重大な過失や故意によって他人の声明や身体を害するために加えた不法行為に対する損害賠償請求権などが該当します。

税金は偏頗弁済にはならない

自己破産では、偏頗弁財が禁止されています。これは、債権者のうち一部だけに優先して借金を返済する行為です。自己破産には、債権者平等の原則があるため、一部の債権者だけが有利になる行為は禁止されているのです。違反した場合、自己破産の手続をしても免責の許可が得られなくなるかもしれません。
自己破産をしても、滞納している税金などは支払わなくてはいけません。そのため、自己破産の手続きをすると決めたら、他の借金は返済せずに税金だけ支払ってしまおうと考える人もいるでしょう。これは、偏頗弁済に当たるのでしょうか?
この点については、破産法163条3項に定められています。簡単に言うと、税金を滞納している場合に優先してその支払いをした場合でも、偏頗弁済とはなりません。ただし、どうせ自己破産をするのだからと改めて借金をして税金を返済することは認められません。借金をしてすぐに自己破産をすると、その借金は返す意思がないのに借りたものとされてしまい、自己破産が認められなくなる可能性が高いのです。場合によっては、罪に問われる可能性もあります。これは、クレジットカードを利用して税金を支払った場合も同様です。

税金の支払いを免除できる方法とは

自己破産をして他の借金の返済が免責になったとしても、収入状況によっては滞納している税金を支払うのが難しいという人もいるでしょう。その場合、税金の支払いをどうにかして免除できる方法はあるのでしょうか?実際のところ、税金の支払いを免れることはかなり難しいでしょう。税金にも、他の借金と同様に時効というものがあるのですが、制度上時効を迎えるのはかなり困難といえます。

なぜ税金の時効を迎えるのは難しいのか

時効は、法律上一定の期間が経過した時点でその責を問われなくなる、という意味合いがあります。例えば借金は返済せず10年が経過すれば時効となります。犯罪行為などは、その罪によって様々ですがやはり一定期間控訴されなかった場合はその刑の執行を消滅させることになります。
税金の時効について定めている法律は、国税通則法です。国税の時効については、申告したのが期限内だったかどうかということや脱税しようと考えていたかによって、時効の年数は異なります。それぞれ申告期限の翌日を起算日として、期限内に申告している場合は3年、申告しなかった場合は5年、脱税を考えていたと思われる場合は7年となっています。また、贈与税だけは扱いが異なっていて相続税法の管轄となり、申告期限の翌日を起算日として6年で時効となります。
それだけ考えると、税金の時効を迎えるのは難しくないように思えます。しかし、税金の時効については時効の中断が定められています。それに該当した場合は時効がリセットされ、また0からになってしまうのです。そして、税金の時効は督促状や納付催告書が送られてきた時点で、時効の中断となりリセットされるのです。また、財産などがある場合はその差し押さえを行っても、やはり時効の中断になります。
税金を滞納している場合に、3年も何もせず放置しておくことはあり得るでしょうか?まずありえません。国や地方公共団体も、税金の時効については良く知っています。そして、時効の中断方法についてもよく知っているのです。税金を滞納していると、督促状は何度も送られてくるでしょう。財産がある場合は、早々に差し押さえられてしまうため、実際に税金の時効を迎えることはまずないのです。

生活保護であれば一時執行停止に

税金は、ほとんどの場合に支払い義務がなくならず、滞納している分も請求されてしまいます。しかし、ごく一部の状況に限っては、税金の支払いを強制されることがなくなります。それは、生活保護を受給しているケースです。その場合、生活に必要な最低限の生活費しか支給されていないので、そこから税金を支払うと生活が立ち行かなくなってしまう可能性が高いのです。その場合は、税金の滞納についてもその処分を猶予するという制度が、国税徴収法という法律で定められているのです。そのため、生活保護を申請して認められれば、税金の滞納についても一時的に執行猶予されて請求されることがなくなります。そして、その状態で3年が経過すると、滞納している税金についてもその返済義務が免除されることになるのです。
注意したいのが、免除されるタイミングです。生活保護を受けて請求が止まると、税金の問題は解決したように思えるでしょう。しかし、実際にはその時点では滞納分が免除になっているわけではないのです。免除されるのは、あくまでも3年が経過してからです。その間に、生活保護を受けなくてもいい状態になった場合は、また税金を支払わなくてはならなくなるため、覚えておきましょう。

税金を滞納し続けた場合のリスク

税金を納めるのが難しいからといって、いつまでも滞納を続けてはいけません。滞納を続けると、とんでもないことになりかねないのです。そのリスクについて、起こりうる点を順に解説していきます。

税金に追加の延滞税・延滞金が発生する

税金を納めずに滞納していると、支払う額がどんどん増えてしまいます。期日を過ぎると、その翌日から延滞税、もしくは延滞金が発生し、税金に加算されてしまうのです。ちなみに、国税を延滞した時には延滞税が加算され、地方税を延滞した場合は延滞金が加算されていきます。これも、長く延滞を続けるとかなりの金額になってしまうので、注意しましょう。

督促状が発送される

税金が払えず滞納した場合、すぐに電話がかかってきて請求されるということはありません。まずは、督促状という形で支払いを促す文書が送付されてきます。国税であれば滞納が発生してから50日以内、地方税は20日以内にその通知が届きます。

財産を法的に差し押さえられるようになる

督促状が届いて、その後10日が経過しても滞納している税金が支払われなければ、その税金を請求している国、あるいは地方公共団体によって財産を差し押さえることが法的に認めらえます。

財産を差し押さえられてしまう

その状態になると、財産を差し押さえるという通知が送付されます。これが、最終催告です。それに応じずに税金を支払わず、滞納を続けてしまうと実際に財産が差し押さえられてしまいます。

銀行や貸金業者も、返済が滞った時には差し押さえという手段をとることがあります。しかし、銀行などが差押をするにはまず裁判所にそのことを申請して、許可を得なくてはいけません。また、自己破産や個人再生などの手続きが開始されれば、強制執行は中断されてしまいます。
ところが、税金を滞納したために差し押さえをする場合は、わざわざ裁判所の許可を得る必要がないのです。行政機関にその職権が備わっているため、即座に差し押さえることができます。
このように、税金を滞納し続けた場合は非常に大変な状態となってしまいます。税金は後回しにしがちな人もいるのですが、こういったリスクを考慮するとなるべく優先して支払うべきでしょう。

どうしても税金を支払えない場合の対処方法

税金を支払いたくても、手元に持ち合わせがなければどうあっても支払うことができません。借金をして税金を支払うと、その後自己破産をしても認めてもらえない可能性が高くなってしまうため、本末転倒でしょう。かといって、延滞を続けてしまうと先ほど申し上げたようなリスクがあります。延滞を続けると支払わなくてはいけない金額も徐々に増えていくため、ますます支払いが困難になってしまいます。最終的には、差し押さえを受けることになるでしょう。
税金が支払えない場合は、適切な対処が必要となります。その対処方法について、解説します。

税金の分割払いができないか相談する

まずは、税金の支払先となる国、もしくは地方公共団体に行って、税金の支払い方法について相談しましょう。通常、延滞した税金は一括納付が原則となるのですが、それを分割で支払うようにしてもらえないか、相談してみてください。まずは、支払う意思があると示すことが重要なのです。
支払う意思を持っていて、そのうえでどうしても支払えないというのであれば、分割納付を認めてもらえる可能性は十分にあります。滞納したまま放置していると、支払の意思がないとみなされて差し押さえなどを受けることになるのです。そうではないということを示すことで、支払いができるように協力してもらえます。ただし、分割納付は正規の手段ではありません。応じてもらえるとは限らない、ということも覚えておきましょう。

地方自治体(支払い先)に自己破産した事情を話す

自己破産をしている人で、収入がない、もしくは低収入のため滞納分の税金を支払う余裕がないという人もいるでしょう。その場合も、やはり税務署や市区町村の役所などに行き、窓口で現在の状況について説明する必要があります。自己破産をしたのなら、そのことも伝えましょう。その際は、自己破産をしたということを証明するために、破産手続の開始を決定したという書面や面積が決定したことを示す書面などを持参しておきましょう。場合によっては、証明するためにそう言った書類を見せるよういわれることがあります。
自己破産では、確かに滞納している税金の支払い義務は免除されません。しかし、それほど生活が困窮しているのであれば、今すぐ払えといわれることは少ないのです。本当に支払う余裕がないとわかれば、一定期間は支払いの猶予をもらえるかもしれません。

生活保護の申請をする

自己破産の手続きをしてそれが認められた後も、税金や社会保険料は発生します。今まで滞納していなかった人でも、今後滞納することになるとは限りません。もし滞納する恐れがある場合は、生活保護を申請するというのも一つの対処方法です。
生活保護を申請すると、それ以降課せられる税金はすぐに支払う必要がなくなります。一時執行停止という措置を受けることができるので、支払は一時的に先延ばしできるのです。免除されるわけではなく、あくまでも猶予です。生活保護費の受給が終了した時点で、支払わなければならなくなるので、注意してください。

換価と納税の猶予を利用する

国税に関しては、定められた要件に該当すると認められれば税金の滞納で差し押さえられた財産の換価や、納税期間について猶予を得ることができます。要件はいくつかありますが、基本的には納税する余裕がないものの支払う意思があると認められることや、申請をしっかりとしていることなどです。

相続税については相続放棄をすればいい

親の遺産を相続する際は、相続税を支払うことになるかもしれません。この相続税が高額で、支払えないというケースもあります。その場合は、相続の権利を放棄することで相続税の支払い義務からは免れることができます。相続税がかかるのはかなり高額の遺産を相続した場合なので、あまり関係がない人も多いでしょう。しかし、もし相続税が発生するようなら、相続するべきかどうかをしっかりと考えましょう。

自己破産した方がいい状況を改めて知ろう

自己破産をしようと検討しているものの、税金を滞納するかもしれないと思って自己破産の決断ができない人もいるでしょう。自己破産したほうがいい状況とはどういう状態か、改めて知っておきましょう。
債務整理の方法には、自己破産以外にも任意整理や個人再生などがあります。他の手続と比較して、自己破産のメリットといえるのは、借金の返済が免除されるという点です。その他の手続では減額されるだけなので、全く支払う余力がないという人には自己破産が向いています。特に、多重債務に陥っている人は多少返済額が減額されても、支払が難しいケースが多いのです。それにあてはまるようなら、自己破産をした方がいいでしょう。
自己破産をせずに現状のままでいると、返済ができずに滞納してしまい、差し押さえを受けるかもしれません。税金はどちらにしても支払わなくてはいけないので、まずはそれ以外の借金をどうにかするために自己破産をした方がいいのです。

自己破産できる条件とは?

自己破産は、誰でもできるわけではありません。その条件について、解説します。

支払い不能状態であること

まずは、現時点で借金の返済を続けることが難しい、支払不能状態であることを裁判所に認めてもらう必要があります。これは、その人の収入や返済状況、借金の額などを総合して判断されるので、収入が少ない人は少ない額の借金でも認められるでしょう。収入が多い人は、それでも返済できないと判断される額の借金でなければ認められないのです。

免責不許可事由に該当しないこと

自己破産には、免責不許可事由というものがあります。これは、例えば借金をした理由がギャンブルや浪費などの場合や、財産隠し、詐欺行為などを行った場合などが該当します。
ただし、免責不許可事由に該当したからといって絶対に認められないわけではありません。特に、借金の原因がシャンブル・浪費の場合は、反省文を提出することを条件に認められるケースもあります。該当してもあきらめず、まずは司法書士等の専門家に相談してみましょう。

まとめ

・自己破産をしても、税金の支払いは免除されない
・税金や社会保険料は非免責債権なので、免責の対象にはならない
・税金の支払いには時効が定められているが、めったに時効を迎えることはない
・税金を滞納していて、督促状などが送付されると時効はリセットされる
・生活保護を受けると、税金の支払いは猶予される
・税金を滞納し続けると、財産が差し押さえられることがある
・延滞している間、延滞税や延滞金が加算される
・どうしても税金が払えないときは、役所などの窓口で分割払いの相談をしてみよう
・自己破産をしたことを伝えて証明すれば、支払の猶予を得られることもある
・自己破産をするには、2つの条件を満たしていなければならない




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