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任意整理の手続きの流れと返済期間は?ブラックリストに載る期間も解説
債務整理の方法のひとつに、任意整理というものがあります。これは、債権者と交渉することで、残っている借金の返済方法を変更し、原則利息をカットしてもらうという方法です。また、その前に過払い金がないかの調査も行います。
任意整理をすると、3年から5年以内に返済が終わるように調整されます。その期間で返済できる見込みがないようであれば、別の債務整理の方法を勧められることになるでしょう。
任意整理は、官報に名前を載せたくない人や債権者のうち一部だけと減額の交渉をしたい人などにおすすめの方法です。
任意整理をすると、信用情報機関のブラックリストに入ってしまうので、ためらう人もいるでしょう。しかし、借金に苦しんでいるのであれば、新たな生活を始めるための最善の手段となりえます。
状況によって、手続きの内容や必要な期間は異なります。この記事では、任意整理がどのような流れで進んでいき、どのくらいの時間がかかるのかを解説します。場合によっては、その期間を短くできる方法も実はあるので、その点についても解説していきます。
任意整理とは
任意整理は、債務整理の一種です。その手続は、2つの段階に分かれます。まず現在返済中の借金に関して、過去の取引を遡って利息と返済額を計算し、利息制限法で定められている利息を超えて支払いをしていないかを調べ、払いすぎているところがあればそこから利息の引き直し計算をして、払いすぎている分を請求します。これを、過払い金請求といいます。
もう一つは、和解交渉です。こちらは、お金を貸している業者と交渉することで、現在残っている借金に対してかかる利息を、今後カットしてもらい、毎月の返済額を調整するというものです。自分が毎月支払える金額をもとに、およそ3年以内に完済できるよう月々の支払いを減額してもらうのです。利息がなくなるだけでも、借金の総額はかなり減額されます。そうやって、相手の同意を得たうえで今後の返済計画を話し合い、完済できるようにするのです。
任意整理のメリットとデメリット
任意整理をした場合の具体的なメリットとは、どのようなものでしょうか?また、デメリットなどもあるのでしょうか?
任意整理のメリット
任意整理のメリットには、以下の6点があります。
・手続き以降、督促がストップする
司法書士などの専門家に任意整理の依頼をすると、受任通知が関係する債務者に送付されます。それが届いた時点で、本人に直接督促の連絡をしたり、取り立てたりすることは禁止されています。そのため、悩みの種となっている督促がストップするのです。
・今後の利息の支払いが原則なくなるので、元金だけの返済でよくなる
和解交渉に成功すると、今後の利息はカットされて現在残っている元金だけを返済すればよくなります。毎月、返済のために支払っている金額のうち、利息が占める割合は意外と大きいので、それがなくなることで借金の額はかなり少なくなるのです。
・長期の分割払いにできる
返済は、3年から5年の長期にわたっての分割払いにできます。60万円の借金を5年かけて返済するとしたら、毎月1万円ずつ返済するだけになります。原則利息がカットされるので、元金を分割するだけですから返済が楽になるでしょう。
・過払い金がある場合、元金も減らすことができる
任意整理をする場合、まずは過払い金調査から行います。もし、過払い金があるようなら、その分を元金から差し引くことができるため、借金はさらに大きく減額できるでしょう。場合によっては、元金以上の過払い金があり、還付されることもあります。
・完済できる将来が確かなものになる
借金をいつまで返し続ければいいのかわからない、という考えになる原因は、利息の存在です。そのせいで、100万円借りたはずが150万円返済しても完済できないということになっているのです。しかし、利息がカットされればあとは元金がはっきりとわかり、それ以上増えることもないのでいつまでに返済できるのかが明確にわかります。
・債権者を選んで、任意整理できる
債権者それぞれと個別に交渉するので、整理したくない債権者がある場合はそこを除いて交渉することもできます。
任意整理のデメリット
デメリットとして考えられるのは、以下の2点です。
・ブラックリストに入ってしまう
信用情報機関に事故情報として記録されるので、約5年間はブラックリスト入りします。その間、新しく借金をしたり、クレジットカードを発行したりすることはできません。ただし、借金の返済を滞納した場合でもブラックリストに入ってしまうので、大したデメリットとは言えないでしょう。
・交渉に成功するとは限らない
個別に交渉する任意整理は、裁判所を通じて手続きをする他の債務整理とは異なり、強制することはできません。各業者との交渉によって決定するので、断られることもあるのです。成功率を挙げるには、なるべく経験豊かな専門家に依頼したほうがいいでしょう。
任意整理・個人再生・自己破産の選び方
任意整理について
債務整理の中で、支払い能力がある人は任意整理か個人再生のどちらかを選ぶことができます。支払い能力がない場合は、自己破産以外の選択肢はないでしょう。任意整理と個人再生は、どのような基準で選べばいいのでしょうか?
任意整理を選んだほうがいいケースとしては、以下の条件にあてはまるケースです。
・家族に知られないように手続きしたい
・時間がないので、なるべく手続きを任せてしまいたい
・債権者のうち、一部の相手は除外したい
任意整理は、債権者と直接交渉する手続きです。そのため、家族に知られてしまうような通知が来ることはありません。個人再生の場合は、裁判所で手続きをすることになるので様々な資料が必要となります。その中には、同居している家族の収支を証明するような書類も含まれるので、家族に知られずに手続きをするのは難しいでしょう。
また、任意整理の手続きを司法書士等の専門家に依頼した場合、基本的にはその事務所に1度行った後は、手続きをお任せにできます。個人再生の場合は、裁判所に訪れなければならないこともあり、さらに書類もかなりの量が必要です。間違いがあると手続できないので、何度か書類を用意したり確認したりすることもあるのです。
そして、任意整理は個別に債権者と交渉するため、一部の債権者とだけ交渉することもできます。友人や親せきなど交渉したくない債権者がいる場合は、除外することができるのです。しかし、個人再生は裁判所を通じて手続きをするので、債権者が複数いる場合はその全員が対象になります。特則によって、住宅ローンだけは除外することができるのですが、それ以外は一律で手続きを進めなければいけません。
個人再生について
個人再生を選んだほうがいいのは、以下の条件にあてはまる人です。
・借金の額がかなり多い
・すでに給与などが差し押さえられている
このような場合は、個人再生を選択したほうがいいでしょう。
個人再生は、裁判所に申請して借金を原則5分の1に減額し、残った額を分割で返済するという手続きです。一定の条件を満たしていれば住宅ローンを除外して手続きが出来るのですが、それ以外の債務は選択することができません。
自己破産について
自己破産は、裁判所に申立をして返済が出来ない状態であると認めてもらい、返済を免責にしてもらう手続きです。自己破産の手続きには、同時廃止事件と管財事件の2つがあり、どちらの手続きになるかで手続きにかかる時間はかなり違ってきます。
自己破産の手続きをして認められれば、それ以降は一部を除いて借金の返済をしなくても良いというのがメリットです。
しかし、自宅や車、預金などの財産を保有している場合は、原則それを処分して返済分に充当する必要があります。また、官報には自己破産したことが掲載されるため、他の人に知られてしまう可能性がゼロではありません。
保証人がいる場合は、保証人に一括で返済するよう請求されてしまうというのもデメリットです。
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任意整理が申請できる条件
任意整理は、債務を返済可能な金額になるよう調整することです。そのため、まずは一定の返済能力があること、つまり、安定した収入があることが条件になります。また、収入から最低限必要になる生活費を差し引いた金額を返済に充てていきます。この、返済に使える金額を可処分所得というのですが、それが十分に確保できないと任意整理はできません。具体的には、債務の総額の60分の1よりも可処分所得のほうが多ければ、任意整理ができます。可処分所得が5万円なら、債務の総額がその60倍の300万円未満であれば任意整理が可能となるのです。
保証人がついている債務でも、任意整理をすることはできます。ただし、債務者が任意整理の交渉をした場合、保証人に請求されてしまうので、保証人も一緒に債務整理をする必要が生じてしまいます。その場合、保証人の信用情報にも債務整理をしたことが記載されてしまうので注意しましょう。
任意整理には、契約時の契約書があることが望ましいのですが、ない場合でも可能です。業者は、ごく一部を除いて契約書を保管しており、法律に基づいた開示請求があればその取引記録が残されています。そのため、契約の時期と契約した業者、債務の金額がおおよそわかっていれば、調査によって不足した情報は埋めることができます。
任意整理の和解までの流れと必要期間
任意整理の手続きは、以下のような流れで進められていきます。
(1)専門家への相談
まずは、司法書士などの専門家に相談しましょう。任意整理で本当にいいのか、もしくは他の債務整理のほうがいいのかなど、様々な検討をしたうえで依頼人に合った方法を考えてくれます。
(2)委任契約
相談して任意整理がベストだと判断された場合、依頼人が納得すれば委任契約を締結します。
(3)受任通知送付
委任契約を締結したら、債権者に対して受任通知を送付します。受任通知は、早ければその日のうちに送付されます。送付した翌日、あるいは翌々日には督促の連絡が来なくなり、取り立ても現れなくなります。それ以降、窓口となるのは依頼した専門家です。また、借金の返済もストップすることになります。
(4)取引履歴の開示請求
受任通知を送付するのと同時に、専門家は債権者に対して取引履歴の開示を請求します。これまでの借り入れと返済の履歴を確認して、今後の交渉や過払い金の確認などを行うのです。通常は、2週間から3週間ほどで開示されることになるでしょう。場合によっては、その倍以上かかることもあるのですが、開示請求は拒否できないので焦らないようにしましょう。
(5)引き直し計算
交渉を行う前に、取引履歴から利息の引き直し計算を行います。それにより、利息を払いすぎていることがないかを確認して、借金の総額を正確にするのです。場合によっては過払い金が発生していることもあるので、慎重に計算しなくてはいけません。
(6)過払い金返還請求
引き直し計算をした結果、過払い金が発生していた場合はその請求を先に行います。過払い金が現在の借金の残額よりも多かった場合、借金は完済となって残りが返還されることもあります。
(7)和解案作成・和解交渉
交渉において、どのように話を進めていくかを決めて、和解案を作成したら和解交渉を開始します。和解案は、主に今後の利息をカットすることと、遅延損害金を請求しないことを要求します。現在の残債については、3年から5年かけて分割で支払うことになります。分割の回数や毎月の支払金額などは、交渉で決定します。
(8)合意書作成
和解交渉が成立したら、両者間で合意書を作成します。
(9)支払い開始
交渉は専門家が代理で行っているので、依頼主は和解が成立したときにその条件などについての連絡を受けます。それに基づいて、これまでストップしていた返済を新しい条件の下で再開することになります。
(10)完済
和解交渉の条件を守り、分割払いを続けて完済した時点で、その借金は返済が完了となります。
最初に相談してから、合意書を作成するまでにはおおよそ3ヵ月、長ければ半年ほどか借ります。しかし、もし過払い金請求が裁判で争うようなことになれば、その期間はさらに延長となり、1年近くかかることもあります。もちろん、その間も返済はストップして、督促されることもありません。
任意整理の手続きに必要な書類
任意整理に必要な書類は、以下の5点です。
・収入関係書類
現在の収入がわかるもの。給与明細などは、直近の2~3か月分を用意しましょう。
・債権者一覧
今回交渉する相手に限らず、なるべく全員を記載したリストを用意してください。また、それぞれの社名だけではなく、借入額や利用開始日、返済額などもわかる範囲で記載しましょう。
・過去の利用明細
借りたときの明細、もしくはATMなどで返済したときの明細など、手元にある場合は用意しましょう。
・借入残高、および返済額がわかる資料
債権者一覧とともに、わかる範囲で用意してください。
・使用している預貯金通帳
現在の預貯金がどのくらいあるのかを確認するために必要です。
これ以外に、
・貸金業者との契約書
・業者からの督促状
等がある場合は、それも用意してください。
任意整理の申請費用
任意整理を依頼した場合にかかる具体的な費用は、各事務所で異なります。そのため、相場について解説します。
弁護士に依頼した場合、和解交渉だけなら3万円から6万円が相場とされています。過払い金請求があった場合は、それに加えて過払い金として回収できた金額の10%~25%が上乗せされます。
司法書士は若干安いことが多く、和解交渉の場合は2万円から5万円が相場です。過払い金請求があった場合は、回収できた金額の10%~25%が上乗せされます。
費用の内訳は、目安として以下のようになっています。
費用内訳 | 弁護士 | 司法書士 |
---|---|---|
相談料 | 0円~1万円 | 0円~1万円 |
着手金 | 1社あたり3万円以下 2社以上の場合、1社あたり2万円以下 | 1社あたり2万円以下 |
減額時基本報酬 | 減額成功金額の10%以下 | 減額成功金額の10%以下 |
過払い金成功報酬 | 回収金額の10%~25% | 回収金額の10%~25% |
こうした報酬については、日本弁護士連合会や日本司法書士連合会からガイドラインが出されています。それを目安として決められるのが、一般的です。
任意整理が長引くケースと対処法
任意整理にかかる期間については先ほど説明しましたが、中には手続きが長引いてしまうケースもあります。どのようなケースがあるか、解説します。
任意整理が長引くケースとしては、まず債権者が交渉に応じてくれないというケースがあります。任意整理は、裁判所を通じて強制的に執行されるものではなく、あくまでも個別に交渉したうえで進めていく手続きなので、交渉そのものを拒否されてしまった場合はどうにもなりません。まずは、交渉ができるように説得することから始めなければいけないので、どうしても時間がかかってしまいます。
また、交渉のテーブルにはついていても、要求を受け入れてくれないことがあります。主な交渉内容は、今後の利息と遅延損害金を原則カットしてもらうことなのですが、それをかたくなになって拒否されることもあるのです。
こういった事態は、専門家に依頼せずに自分で交渉しようと思ったときによくあります。専門家なら経験が豊富なので、どのように交渉を進めればいいのかをよく知っているからです。ただし、専門家だからといって強制することはできないので、100%交渉が成功するとは限りません。それでも、自分で交渉するよりは成功率が高いでしょう。
費用の積み立てに時間がかかる
任意整理を専門家に依頼する場合、まずは費用を支払う必要があります。
和解交渉は、原則として費用を払い終えてから始めるのです。どのくらいかかるのかは、依頼する専門家によって異なります。
しかし、依頼者のほとんどはその費用を分割で積み立て、支払うでしょう。決して無理に支払えと言われることはありませんが、分割回数が増えるとそれだけ任意整理が長引くことになります。
長引かせないようにするには、費用の積立期間を短くして、出来るなら一括で支払うようにしましょう。一括で支払うことができれば、専門家はすぐにでも和解交渉を始めることができます。
実際には債務調査票という書類が揃ってからになりますが、何カ月もかかるものではないため確実に期間は短縮され、分割でしか支払うことができないとしても、その回数を1回でも短くできるようにしましょう。
和解交渉に応じてくれない
任意整理は債権者と交渉をして、原則利息カットや長期分割返済に同意してもらう必要があります。しかし、債権者が交渉に中々応じてくれないと、長引いてしまいます。交渉によって減額してもらうので、交渉自体を拒否されるようなことがあるとどうにもなりません。
また、交渉のテーブルにはついても要求に応じてくれるとは限らないのです。こういったことは自分で交渉しようと思った時によくあることなので、経験が豊富な専門家に交渉してもらうことで、交渉に応じてくれる可能性が高くなります。
頭金を要求されることもある
債権者の中には、任意整理で長期の分割返済を認める代わりに、ある程度まとまった金額を頭金として先に返済することを求めるところもあります。これは、交渉の際の和解条件として提示されることもあれば、それとは別に請求されることもあるのです。
もし、その要求に応じて頭金を用意できない場合は、それを準備する期間が必要になります。そして、交渉にかかる期間もその分長くなるのです。
頭金の額や、必要になるケースは個別に異なり、必要かどうかが分かるのが和解交渉を開始した後なので、長期化の原因になるのです。
期間を短くするには、なるべく早く頭金を準備するしかありません。多くの場合はボーナスを原資にしますが、親族などに援助を求められるのであればそれでもいいでしょう。そのような心当たりがない場合は、なるべく早く貯められるよう頑張って貯金をしましょう。
他の手続きと並行して進めている
任意整理の手続きをする際は、他の手続きと並行して進めていることもあります。
例えば、過払い金調査をしたところ過払い金があることが分かったという場合は、まず過払い金請求をしてから債務整理をすることになります。その分、手続きにかかる期間は延びていくのです。
過払い金の返還請求にも交渉が必要ですが、交渉で話がまとまらないと今度は訴訟となって裁判で争うことになります。そうなると、さらに時間がかかるでしょう。
過払い金があった場合は、その分を返済に充ててから任意整理の交渉を始めることになるかもしれません。そのため、同時進行ではなく1つずつ進めていく必要があります。
また、債権を調査していたら既に時効が成立していた、というケースもあります。その場合も、まずは時効が本当に成立しているのかを確認する必要があるため、時間がかかるのです。
和解から返済までの流れと期間
上述した部分と繰り返しになりますが、今一度おさらいしていきましょう。
任意整理の手続きは、以下のような流れで進められていきます。
(1)専門家への相談
まずは、司法書士などの専門家に相談しましょう。任意整理で本当にいいのか、もしくは他の債務整理のほうがいいのかなど、様々な検討をしたうえで依頼人に合った方法を考えてくれます。
(2)委任契約
相談して任意整理がベストだと判断された場合、依頼人が納得すれば委任契約を締結します。
(3)受任通知送付
委任契約を締結したら、債権者に対して受任通知を送付します。受任通知は、早ければその日のうちに送付されます。送付した翌日、あるいは翌々日には督促の連絡が来なくなり、取り立ても現れなくなります。それ以降、窓口となるのは依頼した専門家です。また、借金の返済もストップすることになります。
(4)取引履歴の開示請求
受任通知を送付するのと同時に、専門家は債権者に対して取引履歴の開示を請求します。これまでの借り入れと返済の履歴を確認して、今後の交渉や過払い金の確認などを行うのです。通常は、2週間から3週間ほどで開示されることになるでしょう。場合によっては、その倍以上かかることもあるのですが、開示請求は拒否できないので焦らないようにしましょう。
(5)引き直し計算
交渉を行う前に、取引履歴から利息の引き直し計算を行います。それにより、利息を払いすぎていることがないかを確認して、借金の総額を正確にするのです。場合によっては過払い金が発生していることもあるので、慎重に計算しなくてはいけません。
(6)過払い金返還請求
引き直し計算をした結果、過払い金が発生していた場合はその請求を先に行います。過払い金が現在の借金の残額よりも多かった場合、借金は完済となって残りが返還されることもあります。
(7)和解案作成・和解交渉
交渉において、どのように話を進めていくかを決めて、和解案を作成したら和解交渉を開始します。和解案は、主に今後の利息をカットすることと、遅延損害金を請求しないことを要求します。現在の残債については、3年から5年かけて分割で支払うことになります。分割の回数や毎月の支払金額などは、交渉で決定します。
(8)合意書作成
和解交渉が成立したら、両者間で合意書を作成します。
(9)支払い開始
交渉は専門家が代理で行っているので、依頼主は和解が成立したときにその条件などについての連絡を受けます。それに基づいて、これまでストップしていた返済を新しい条件の下で再開することになります。
(10)完済
和解交渉の条件を守り、分割払いを続けて完済した時点で、その借金は返済が完了となります。
最初に相談してから、合意書を作成するまでにはおおよそ3ヵ月、長ければ半年ほどか借ります。しかし、もし過払い金請求が裁判で争うようなことになれば、その期間はさらに延長となり、1年近くかかることもあります。もちろん、その間も返済はストップして、督促されることもありません。
任意整理後の返済の注意点
任意整理をした後は、毎月決まった金額を返済していかなければいけません。その中で注意したいのが、
・和解契約書に沿った返済をする
・新しい借金をしない
という点です。それぞれについて、詳しく解説していきます。
和解契約書に沿った返済
和解契約書では、毎月いくらずつ返済していくかということも取り交わしています。その金額をきちんと守って、返済していきましょう。例えば、毎月3万円となっているならきちんと3万円ずつ返済しなくてはいけません。今月4万円返済したから、来月は2万円でいいとはならないのです。返済期日も、しっかりと守らなくてはいけません。
ちなみに、3万円のところを4万円、5万円と多めに返済することは可能ですが、それで得をすることはありません。利息が付かないので、早く返そうとしても返済の総額に変化はないのです。また、早く返済したからといって信用情報が早期に回復するということもありません。早期に返済しようと無理をしないように、注意しましょう。
新しい借金をしない
和解契約書の中で、返済中に新しく借金をすることは禁止されています。もし、返済が終わる前に新規で借り入れをしてしまうと、契約は解除となってしまいます。その場合、利息カットの約束もなくなるので、それまでカットされていた分も請求される可能性があります。遅延損害金も請求されるので、交渉した意味がなくなってしまうのです。場合によっては、残った借金の一括返済を求められることもあるでしょう。
通常、信用情報機関のブラックリストに入っている状態では、新規に借り入れをすることはできません。そのための契約ができないのですが、闇金など一部の違法な貸金業者であれば、借りることができるかもしれません。その場合、返済に困っても任意整理ができず、自己破産や個人再生をしても無視をして取り立てを受けることがあるので、絶対に利用してはいけません。
信用情報が回復し、クレジットカードが利用できるようになるまでの期間
任意整理をすると、そのことが事故情報として信用情報機関に登録されてしまいます。信用情報機関は、銀行やクレジットカード会社、消費者金融などが共同で作成したデータベースで、業界ごとに3つに分けられています。銀行などが主に利用するのが全銀協、クレジットカード会社や消費者金融は、JICCかCICのどちらかを利用します。どの信用情報機関を利用しているのかは、多くの場合各社のホームページなどに記載されています。任意整理の情報は、直接関係がなかったとしてもそのすべてのデータベースに登録されてしまいます。
この事故情報が登録されることを、「ブラックリスト入り」ともいいます。登録されてしまうと、その間はクレジットカードの新規作成や消費者金融での借り入れ、銀行でのローン申し込みがほとんど不可能になってしまいます。また、現在持っているクレジットカードも利用できなくなってしまいます。
これは、ある程度の年数が経過するまで、消えることはありません。登録が消えて信用が回復するまでの期間は、任意整理の場合はすべての信用情報機関で共通して、5年ほどかかるといわれています。
回復したかどうかは、自分の信用情報を各機関に請求すると知ることができます。
理想の家計の割合
任意整理をして、無理なく返済を続けるには家計のバランスが大切です。このバランスが崩れていると、どこかに無理が生じて返済が難しくなる可能性が高くなるからです。
返済がない場合の理想のバランスは、以下のように言われています。
収入を100%とした場合 | |
---|---|
家賃 | 30%未満 |
食費 | 15%~18% |
日用品 | 3% |
水道・ガス・光熱費 | 6% |
通信費 | 6% |
娯楽費 | 4~6% |
交際費 | 5~6% |
被服費 | 3~5% |
貯蓄 | 15%前後 |
その他 | 5~8% |
返済は、全体を少しずつ切り詰めるか、貯蓄分を回すことになるでしょう。著しくバランスが崩れている場合は、もう一度家計を見直してみる必要があるでしょう。
任意整理の年間利用人数
債務整理の手続には3種類ありますが、その中でも最も利用者が多いのは任意整理です。裁判所などを通じた手続きではないので正確な人数は不明ですが、任意整理をしている人は最低でも年間200万人以上、推定では300万人から最大で500万人近いといわれています。つまり、50人いれば1人か2人は任意整理をしていることになります。
ただし、周囲で任意整理をした、という人はあまりいないでしょう。それは、ほとんどの方が秘密にしているからです。
借金の平均減少額
任意整理をしたことで、どのくらい借金を減らすことができるのでしょうか?その額も、人数と同じく裁判所を通じた手続きではないので正確な額は不明です。また、それぞれの状態や借金の額、借金をしている期間によっても変わるのですが、平均すると20%~30%ほど減額されているようです。
0になることはありませんが、それだけ減額されたうえで長期分割での返済となるので、かなり返済が楽になるのではないでしょうか。
ブラックリストに載っても債務整理をするべき理由
ブラックリストに載ることを恐れて、債務整理に踏み出せないという人は少なくありません。しかし、ブラックリストに載ったとしても、債務整理はするべきです。そもそも、借金を滞納してしまった場合は、その時点でブラックリストに載ってしまいます。ですから、あまり気にすることはないのです。
まず、債務整理を考えるということは、現在返済に悩んでいるはずです。今のままだと、返済を続けるのが難しいと感じているからこそ、債務整理を検討するようになるからです。また、すでに返済が滞って、取り立ての電話などで悩んでいる人もいるでしょう。
その悩みは、債務整理で解決する可能性が高いのです。債務整理を専門家に依頼すると、受任通知が送られて借金の取り立ては止まります。そして、自分の借金の状況や収入、生活状況などを検討したうえで、どのような方法がいいのかを相談しながら決めることができます。
借金の悩みというのは、なかなか人に相談するのに勇気がいるものです。特に、友人や家族などの近しい人に相談するのは難しいでしょう。しかし、司法書士などの専門家に相談すると、その悩みをしっかりと聞いてくれて解決策も提示されます。
自分の未来を暗くしているのが借金だとしたら、それをなくすることで明るい未来へと向かうことができるでしょう。
任意整理は専門家に依頼をしよう
任意整理は、一般的に司法書士等の専門家に依頼して手続きを行います。しかし、そのための料金が高いと感じた人の中には、自分で手続きをしたいという人もいるでしょう。その場合と、依頼した場合のメリット・デメリットについてまとめたので、参考にしてください。
司法書士 | 弁護士 | 自分で行う | |
---|---|---|---|
時間 | ◎ | ◎ | × |
費用 | 〇 | × | ◎ |
対応金額の制限 | △ 140万円を超える借金には対応できない | ◎ 金額の制限なくできる | △ 特にないが、金額が増えると手間も増える |
取り立て・督促 | ◎ 依頼を受けた時点で受任通知を送付し、取り立てや督促が止まる | ◎ 依頼を受けた時点で受任通知を送付し、取り立てや督促が止まる | × 交渉が終わるまでは止まらない |
自分で手続きを行った場合は、料金こそかからないものの成功率が低く、時間もかなりかかります。専門的な知識がなければ、相手に納得してもらうことは難しいのです。
料金の高さが気になる人もいるでしょうが、書類作成などの難しいところを代行してもらうことができます。料金以外のところも考慮したうえで、依頼するかどうかを判断しましょう。
任意整理のQ&A
Q.任意整理の対象にしなかったクレジットカードは、使い続けることができる?
A.任意整理の対象にしたクレジットカードは、その時点で強制解約されてしまいます。対象から外したものはすぐに使えなくなるわけではないのですが、信用情報に事故情報として記録が残るため、更新のタイミングなどで信用情報をチェックされると使えなくなってしまいます。なお、デビットカードの使用には問題ありません。
Q.任意整理は、正社員ではないアルバイトや無職でもできる?
A.アルバイトでも、安定した収入があれば問題なく任意整理はできます。しかし、無職の場合は収入がないので、和解交渉の成立は難しいでしょう。今後、就職するなどして残った債務を支払えるようになってから、手続きをしたほうが成功率は高いでしょう。
Q.保証人がいる借金を任意整理した場合はどうなるの?
A.任意整理をした借金に保証人がいる場合は、その後保証人に請求されるようになってしまいます。保証人もいきなり請求されるとどうしていいのかわかなくなるので、まずは保証人に報告してから任意整理を依頼しましょう。また、保証人に迷惑をかけたくない場合は、その債権を外して任意整理をしたほうがいいでしょう。
Q.和解交渉は、必ず受け入れてもらえる?
A.和解交渉を申し込んでも、必ず受け入れてもらえるとは限りません。近年は、過払い金請求によって経営状況が悪化している貸金業者も増えているので、回収できる金額が減ってしまう交渉は受けて入れてもらえない可能性が高いのです。また、担保がつけられている借り入れも、和解せずに担保を差し押さえることが多いので、交渉は難しいでしょう。
Q.任意整理をした場合、家族に影響がある?
A.任意整理をしたとき、信用情報にそれが記録されるのはあくまで本人です。たとえ同居して生計を一にしていても、家族には何ら影響はないので、安心してください。ただし、子どもが進学時に奨学金を利用したい場合、あるいは学資ローンを検討している場合などに、信用情報のブラックリストに入っていると保証人になれず、ローン契約もできないでしょう。
まとめ
・任意整理は、借金の利息を原則カットして、元本を長期分割返済にしてもらう手続き
・裁判所を通さずに、債権者と個別に交渉する必要がある
・対象となる債権者は、任意に選ぶことができる
・手続きには3か月から6か月ほどかかるが、交渉次第では長引くこともある
・手続きにかかる費用は、着手金プラス成功報酬となっていることが多い
・任意整理をすると、信用情報のブラックリストに入る
・信用情報は、5年前後で回復する
・任意整理をしてから返済を滞納すると、和解契約が破棄されることがある
・任意整理の返済中に、新規で借金をすることは禁止
・年間で、300万人前後が任意整理をしていると推測されている
・任意整理によって、平均20%~30%の借金が減額される
・交渉は難しいので、専門家に依頼するのがおすすめ
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まだデータがありません。
クレジットでの買い物や、軽い気持ちでキャッシングを重ねるうちに借金が知らない間に増えることは、だれにでもあることです。
支払いが無理かなと感じたら、身近な法律家である司法書士にまずは、ご相談ください。
あなたの早めの相談が問題解決へのきっかけになります。
一人で思い悩まずに、司法書士といっしょに問題解決に向けてスタートしましょう。
また、司法書士は、不動産登記や商業登記、簡易裁判所で扱う事件についての代理等をしていますので、借金問題以外の法律相談もしています。
弁護士では、敷居が高いと感じている方も、気軽にご相談ください。