任意整理は自分でできる?手続き方法やメリット・デメリットを紹介
任意整理は、借金を減額する債務整理の手続きの一種です。債権者に任意整理を希望すると申請し、直接交渉することで減額できる条件について話し合います。そうして、債権者の同意が得られる条件が決まったらその条件で和解書を作成し、今後はその条件で返済していく事に同意します。任意整理では、基本的に元金は減額されません。その交渉が成立した日以降は原則利息カットされるので、その分が減額されることになります。また、残った借金を返済する期間も基本的に3年、最長で5年まで伸ばすことができます。交渉に応じてもらうことができれば確実に返済できるということを証明しなくてはいけないので、収入や支出を証明する書類が必要となります。
任意整理を検討しているものの、専門家に依頼すると高い費用が掛かる、というイメージがあるかもしれません。そういった人は、自分で手続きをすることができないか気になるかと思います。
自分で手続きすることも可能なのですが、交渉は難しく書類の用意なども大変です。交渉に成功しなければ借金は減額されないので、確実に減額するためには専門家に依頼した方がいいでしょう。費用も、減額された金額よりは少ないので、よほど交渉に自信がある人以外は専門家に依頼することをおすすめします。
任意整理のメリット・デメリット
まずは、任意整理をするメリットとデメリットについて確認しましょう。債務整理の手続きは他にもありますが、その中で任意整理を選ぶ理由とは何でしょうか?また、その際に注意したいこととしては、どのようなことがあるでしょうか?
任意整理のメリット
任意整理には、整理する債権者を選ぶことができるというメリットがあります。複数の債権者がいる中で、どの債権者と交渉して減額してもらうかを選ぶことができるのです。他の債務整理では、債権者は全て整理対象になってしまいます。友人や親などからお金を借りている場合も、債権者として一緒くたに扱われてしまいます。しかし、任意整理なら親や友人を除外して、整理することができるのです。
原則利息がカットされるというのも、実は大きなメリットです。借金の返済がなかなか終わらない理由として、原則利息の負担が大きいというのがあるのです。特に、借金緒額が大きくなってしまうとその負担は更に増えてしまいます。それがカットされ、元金だけを返済すればよくなるので、毎月の返済額は少なくなり確実に借金を減らすことができるのです。
専門家に依頼して手続きをすると、それ以降は督促の連絡などがストップして手続きが終わるまでは返済もしなくてよくなる、というメリットもあります。
任意整理のデメリット
任意整理をすると、信用情報機関に登録されてブラックリストに入ってしまうというのが、最も大きなデメリットです。登録されている間は、クレジットカードの新規作成や新規の借り入れができなくなります。また、現在持っているクレジットカードも使えなくなるので、注意しましょう。
あくまでも、交渉によって減額してもらう手続きなので、失敗する可能性もあります。そのことも踏まえた上で、手続きをしましょう。
こんな状況に当てはまったら危険信号
任意整理をしないまま、以下のような状況になってしまった場合は危険信号です。当てはまる場合は、なるべく早く任意整理の手続きをすることをおすすめします。
毎月、返済しているのに借金が減らない
毎月、期日にはきちんと返済しているのに借金が減らないという場合は、原則利息分しか返済できていないということです。それでは、いつまでたっても借金の返済は終わりません。むしろ、返済している分が原則利息分にも足りず、増え続けている可能性もあるでしょう。これは、借りている元金が多すぎる場合に起こり得る状態です。
この状態では、借金を返済できる目処が立ちません。むしろ、いずれ返済額が増えてしまい返済が間に合わなくなる可能性の方が高いでしょう。そうなる前に任意整理をして、今後の原則利息をカットしてもらい、確実に元金を減らしていけるようにしていく必要があるでしょう。
3社以上の金融会社から借入れをしている
複数の金融機関から借りるということは、返済が間に合わずに他のところから借りているということが多いのです。また、それを繰り返していく内に借金の額は雪だるま式に増えていってしまうので、どこかで止めなければ手に負えない金額になってしまいかねません。いずれ、返済も間に合わなくなって滞納してしまう可能性が高いでしょう。
また、複数に返済する場合は、期日や最低返済額を間違えやすくなってしまいます。それも延滞の原因となり、度重なる延滞で新規の借り入れができなくなった場合には、ドミノ倒しのように返済が滞ってしまう可能性もあります。その結果、ヤミ金業者から借りたり、クレジットカード現金化をしたりするケースも増えてきます。
この場合も、早いうちに債務整理をするのがおすすめです。債務整理を専門家に依頼した場合、事務所によっては、その月の返済分をまとめて専門家の事務所に振り込む代わりに、返済してくれる代行弁済というサービスを行っていることがあります。これなら、毎月給料日に返済する分をまとめて専門家の事務所に支払うだけで、あとは何もしなくていいのです。
今月の返済ができない、延滞している
既に返済が滞っている場合は、迷わず任意整理の手続きをしましょう。任意整理の最も大きなデメリットは、信用情報機関に登録されてブラックリストに入ってしまうことです。しかし、延滞をしている場合も同じく信用情報機関に登録されて、ブラックリストに入ってしまうのです。最初の延滞なら一時的に登録されるだけですが、繰り返し延滞すると長い期間登録されることになってしまうのです。そうなると、任意整理によってブラックリストに入ってしまうことは気にする必要がなくなります。
任意整理は、交渉して和解が成立した日以降の利息をカットできるというのが原則です。つまり、任意整理の手続きを遅らせるとそれだけ多くの利息を支払わなければいけないのです。任意整理をためらっている間も、利息はどんどん積み重なっています。既に延滞しているのなら、借金の額を減らすことを第一に考えるべきでしょう。1日でも早く、任意整理の手続きをすることをおすすめします。
任意整理の手続方法と流れ
任意整理の手続きは、以下のような流れで進められていきます。
(1) 専門家への相談
まずは、司法書士などの専門家に相談しましょう。その際は、必ず任意整理の手続きをするとは限りません。依頼人の借金の状況や家計の状況、収入などから、他の債務整理の方法とあわせてどれが最も適しているか、アドバイスをしてもらえます。それぞれ、メリットやデメリットが異なるので、どれがいいか慎重に考えましょう。
(2) 委任契約
専門家との相談の結果、任意整理が最も適していると判断された場合、その際にかかる費用や手続きの流れなどを詳しく解説されます。その内容を聞いて問題がなければ、双方合意の上で正式に委任契約を結びます。
(3) 受任通知送付
契約が完了したら、専門家から債権者に対して受任通知が送付されます。この通知を受け取った債権者は、それ以降依頼人に直接督促などの連絡をすることができなくなります。通知は契約をしたらすぐに送付されるので、その翌日か翌々日には債権者の元に届きます。つまり、早ければ翌日には督促の連絡がストップするのです。取り立ても禁止されるので、それ以降は安心して過ごすことができるでしょう。それ以降は、専門家が債権者からの連絡の窓口となります。また、依頼してからは交渉が終わるまでの間、返済も禁止されます。委任契約を締結したら、債権者に対して受任通知を送付します。受任通知は、早ければその日のうちに送付されます。送付した翌日、あるいは翌々日には督促の連絡が来なくなり、取り立ても現れなくなります。依頼をしてからは、専門家が窓口になります。また、借金の返済もストップすることになります。返済しなくてもよくなるのではなく、返済してはいけないのです。返済期日になって、間違えて返済してしまわないように気を付けてください。
受任通知は送られますが、すぐに交渉などを開始するとは限りません。なぜなら、依頼が成立しても着手金などが支払われない限りは正式な契約とはならないからです。返済がストップするので、その分で着手金を支払うといいでしょう。その際は、分割での支払いでも問題ありません。ただし、依頼に向けて動き出すのは全額が支払われてからとなります。
(4) 取引履歴の開示請求
専門家に依頼すると、債権者に対して取引履歴を開示するよう請求します。これは、過払金がないかを確認するのが主な目的です。また、同時にこれまでの借入と返済の履歴を確認することで、交渉の際の参考にするという意味もあります。そのため、過払金が無くてもほとんどの場合は請求します。
通常、開示請求を行ってから開示されるまでは、2~3週間ほどかかります。場合によっては、1ヶ月以上かかることもあります。ただし、どれだけ時間がかかっても焦る必要はありません。開示請求は拒否できないので、時間がかかっても記録が残っていれば確実に請求されます。
(5) 引き直し計算
取引履歴が開示されたら、まず過払金がないかを確認します。取引履歴を見て、過払金に該当する期間の利用がある場合は、利息の引き直し計算を行います。もし、その期間で法定金利以上の利息を支払っていた場合は、その分を差し引いてそれ以降の分も計算していき、借金の残額から払いすぎている分を差し引くのです。場合によっては、本来ならすでに完済できるだけの額を支払っているのに、まだ返済していたということもあり得ます。その場合は、過払金として請求することになります。複雑な計算なので、計算は慎重に行わなければいけません。
(6) 過払い金返還請求
引き直し計算をした結果、既に完済しているはずという結果になった場合は、余分に支払った分の返還を求める過払い金請求を行います。また、完済まではいかなくても借金の額が減額になるという場合は、その内容で交渉を進めます。
この過払金請求は、任意整理の手続きよりも優先されます。本来なら完済しているはずという場合は、交渉する意味がなくなるからです。
この過払金の手続きが終われば、任意整理の手続きを始めます。
(7) 和解案作成・和解交渉
債権者とどのような条件で交渉するかは、事前に説明されます。その上で、どこまで譲歩するかも打ち合わせた上で交渉を始めます。基本的には、今後の原則利息のカットと遅延損害金のカットを条件とします。また、残額の返済について返済の回数や毎月の返済額も、交渉で決定されます。
(8) 合意書作成
お互い合意して和解交渉が成立したら、その契約内容をまとめた和解書を作成して交渉は完了となります。
任意整理を自分で行う場合に節約できる費用は?
任意整理の手続きを専門家に依頼せずに自分で行った場合、専門家に支払う費用分を節約できます。
任意整理を弁護士や司法書士に依頼した場合は、専門家の事務所によって金額は異なるものの、債権者1件当たり数万円の基本費用と成功報酬がかかります。
自分で手続きをした場合には、基本費用も成功報酬もかからない点がメリットです。
しかし、自分で行った場合は交渉の成功率が低くなってしまい、成功しなければ減額ができないデメリットがあります。
そもそも自分で任意整理をすることは可能?
任意整理の手続きは、自分で行うこともできます。自分で行った場合は、専門家に依頼する費用がかからないので、安く済ませることができます。しかし、その方法はあまりお勧めできないのです。
なぜかというと、専門家に依頼した場合と自分で手続きをした場合では、成功率が大きく変わるからです。また、スムーズに手続きを進めるのも難しいので、その分かかる期間も長くなる傾向があります。
任意整理というのは、債権者と交渉して借金を減額してもらう手続きです。あくまでも交渉なので、減額を強制できるわけではないのです。そもそも、お金を借りる時に契約を交わしているので、お金を借りる条件は承知しているはずです。それなのに、後になってからこの条件では厳しいから、貸し付けの条件を変更してほしいと申し出るのが任意整理です。それでは、相手も素直に納得するのが難しいでしょう。
任意整理には、法律的な問題も多分に含まれます。また、金融に関する問題もあるので、そういったことに詳しい知識を持っていないと、手続きに時間がかかるでしょう。自分で法律や金融に詳しいというのであれば、自分で手続きをするのも悪くないでしょう。しかし、あまり知識に自信がないという場合は、せめてそれに詳しい人を代理に立てて交渉をスムーズに進められるようにするのが、誠意といえます。その点から考えても、やはり専門家に依頼したほうがいいのです。
任意整理では、様々な書類を用意する必要があります。また、過払い金の計算なども必要となることがあるのですが、それをスムーズに進めることができなければ手続きにかかる期間も長引いてしまいます。
まず問題となるのが、過払い金の計算です。この計算はかなり昔にさかのぼって計算する必要があり、計算も複雑です。計算を間違えて貸金業者に過払い金を請求するようなことがあれば、その後の交渉などでも不利になってしまいかねません。そのため、過払い金の計算になれている専門家に任せた方が確実です。
次に問題となるのが、交渉と和解です。交渉の際は、減額してもらうための説得材料となる資料をそろえる必要がありますが、それを有効に使うことができるでしょうか?交渉の経験が豊富な専門家なら、どんな資料が交渉に有効かを知っています。そのため、有効な資料をしっかりとそろえることができるのです。また、交渉が成立したらその内容をまとめた和解書を作成することになります。その作成も、やはり経験豊富な専門家でなければ難しいかもしれません。
任意整理にかかる期間
任意整理は、相談してから和解契約を締結するまでどのくらいの期間がかかるのでしょうか?事務所によって、着手金が必要なところと着手金無料のところがあります。その中でも、はたの法務事務所は着手金は無料です。
着手金が必要な事務所の場合は、着手金を分割払いにしているとその支払いが終わってから動き出すことになります。そのため、必要な期間もそれだけ長くなります。
着手金が不要な事務所の場合は、依頼をしてすぐ解決に向けて動き出します。
着手金が不要な場合、もしくは一括で払った場合、まず開示請求をしてから開示されるまでに約2週間かかります。そこから、過払い金の計算や借入・返済の記録の確認をします。そして、交渉を開始するのです。過払い金がある場合は、先にその請求をします。過払い金請求には、別途2~3カ月程度かかります。もし、返還に応じてもらえない場合は裁判になることもあるので、半年ほどかかることもあり得ます。その分、任意整理の手続き完了までにかかる期間は長くなってしまいます。
業者との交渉には、最低でも3カ月はかかるとみておいた方がいいでしょう。交渉は1回で終わるわけではなく、何度かに分けて行われます。その待ち時間もあるので、3カ月以上かかるのです。
そのため、任意整理の手続きには短くても3か月、長ければ半年以上かかることもあります。
任意整理の期間が長引いてしまうのはどんな場合?
任意整理の期間はどのようなときに長引くのでしょうか?期間が長引く理由の中でよくあるものを解説します。
まず、着手金を分割払いにした場合です。任意整理を専門家に依頼する場合、一般的には着手金と基本報酬、成功報酬がかかります。成功報酬は、減額に成功した金額の10%などを支払います。このうち、基本報酬と成功報酬は後払いでいいのですが、着手金だけは前払いとなっています。そのため、まずはこれを支払わないと、依頼を正式に受けたことにはならないのです。任意整理を依頼すると、着手金を支払う前から受任通知が送られ、返済もストップします。その返済分を着手金の支払いに充てればいいのですが、一括で支払えない場合は分割での支払いとなります。そして、全額を支払い終えて初めて任意整理の手続きを開始するのです。そのため、分割払いをしている期間の分だけ、任意整理の期間も長引いてしまいます。
不動産が担保に設定されている借金など、問題のある借金は交渉が長引いてしまいます。担保となっている不動産を売却したほうが、より多くの金額を回収できる可能性が高いからです。また、借金をしてから任意整理をするまでの期間が短い場合は、返済するつもりがないのに借金をしたのではないかと疑われてしまうことがあります。その場合も、交渉に応じてもらいにくくなるのです。
貸金業者によっては、なかなか交渉に応じてもらえないことがあります。大手の消費者金融ほど交渉に応じてくれる可能性が高く、中小の消費者金融は応じてくれないケースが多いのです。また、中小の消費者金融は交渉の経験が少ないため、交渉が長引くことがあります。そういったところが交渉に応じてくれるかどうかは、交渉する人の腕次第といえるでしょう。経験豊富であれば、交渉がスムーズに進む可能性が高くなります。
任意整理を自分でやる場合の申請方法
どうしても、任意整理の手続きを自分で行いたいという人もいるでしょう。その場合は、どのようにすればいいのかその申請方法を解説します。
自分で任意整理をする場合も、手続きの流れに違いはありません。取引履歴の開示請求をして、開示された取引履歴から過払い金がないかをチェックします。過払い金があればそれを請求して、それが終わったら債権者と交渉します。その交渉に成功すれば、和解になります。その際は、和解契約書を作成します。そして、和解条件に従って返済していくのです。
取引履歴の開示請求は、自分で行うのも難しくありません。これは、請求されたら開示しなくてはいけないと法律で定められているからです。しかし、専門家からの請求でなければ、開示しようとしない貸金業者もいます。この開示請求に関しては、改正貸金業法に明記されているので、開示請求に従わなかった場合は違法であることを伝えなくてはいけません。
また、過去の取引についての引き直し計算は、非常に複雑です。当てはまる部分の金利を適法範囲にして計算し、余分に支払った分を元金から引いてというのを繰り返さなくてはいけません。途中で1カ所でも間違えると、最初からやり直しになってしまいます。
何より自分で行うのが困難なのが、交渉です。任意整理では、交渉の結果次第でどのくらい減額できるかが決まります。一方的にこちらの要求を伝えて、それで応じてもらえるわけではないのです。どのくらいなら応じてもらえるのか、また応じた際のメリットや応じなかった場合のデメリットなども伝えなくてはいけないので、自分で交渉するのは難しいのです。これこそが、任意整理の手続きは専門家に任せた方がいいという理由です。
また、もう一つ専門家に任せたいのが、和解です。和解をしたら、その内容を和解書としてしっかりとした書類にしなくてはいけません。この書類も、自分で作ることになるのです。共通のフォーマットが決まっているわけではなく、必要事項も書き忘れがないようにしないといけないので、自分で作成しても却下されるかもしれません。この作成は、専門家に任せてしまうのが一番です。
任意整理には、このように専門家にお願いしたほうがいいポイントがいくつもあります。失敗したらどうにもならないので、手続きの成功率を高くしたいのであれば専門家に依頼するのがおすすめです。
任意整理を自分でやる場合のデメリット・リスク
任意整理を自分で行う場合は、いくつかのデメリットやリスクがあります。どのような点が問題となるのか、解説します。
デメリットやリスクとなるのは、以下のような点です。
・督促は止まらない
・交渉がまとまる可能性は低い
・交渉に時間がかかる
・過払い金を見落としてしまうことがある
・相手にされないことがある
それぞれ、詳しく解説します。
・督促は止まらない
任意整理を司法書士等の専門家に依頼した場合、専門家から債権者に対して受任通知が送られます。これは、依頼を受けたということを通知するためのもので、これを受け取った債権者はそれ以降、本人に直接督促をすることが禁止されます。本人の代わりに、専門家が窓口になって話を聞くことになるのです。そのため、督促の電話に悩まされていた人にとっては、その電話から解放されることになります。
しかし、自分で手続きをする場合は、誰も代わりの窓口にはなりません。受任通知も送付されないので、当然督促は止まりません。貸金業法などで、受任通知を受け取った場合は本人に直接督促・取り立てをすることは禁止と定められているのですが、あくまでも受任通知が基準です。任意整理の手続きをするというだけでは、止まることがないのです。
・交渉がまとまる可能性は低い
貸金業者は、任意整理を申請された場合に必ず応じてくれる、というわけではありません。基本的には、そのような申し出に応じたくはないのです。なぜなら、最初に契約した内容で返済を求めているのに、後からその条件を変更して欲しいというのが任意整理だからです。最初に15%の利息を付けて返済するといったのに、後になってやっぱり利息なしでいい?といわれているのですから、応じるのは不本意でしょう。
それでも、任意整理を申し込まれることは何度もあるので、各社ではそれぞれ任意整理に応じる基準などを決めています。これは状況によって異なりますが、この基準に沿った条件なら和解してもいい、というのをあらかじめ決めているのです。司法書士等の専門家は、何度も同じ貸金業者と交渉しているので、ある程度その基準を知っています。以前和解が成立した条件、和解できなかった条件を知っているので、そこから基準が推測できるのです。そのため、最初からその基準に近い条件を出して交渉できます。しかし、自分で手続きする場合はその基準がわかりません。そのため、自分の希望を言うしかないのです。それが基準から遠ければ、当然交渉はまとまりません。そのせいで、専門家よりも成功率は低くなるのです。
・交渉に時間がかかる
自分で交渉する場合、専門家よりも時間がかかってしまいます。資料一つとっても、何が必要かわからないために用意を怠り、交渉の場を再度設けてもらうことになるかもしれません。また、貸金業者ごとに和解を受け入れる基準や特徴があります。専門家なら、何度も交渉した経験からおおよそわかるでしょう。しかし、自分で行う場合はその経験がないので、わからないのです。そのせいで、交渉を繰り返すことになります。貸金業者も、何度も交渉をするのは面倒です。交渉の回数が増えれば、それだけ交渉がまとまる可能性は低くなると思った方がいいでしょう。
・過払い金を見落としてしまうことがある
過払い金を計算する際は、過去の取引履歴から引き直し計算を行います。その結果、過払い金があれば請求するのですが、計算ミスで過払い金があるのに、ないと思ってしまうことは少なくありません。専門家なら慣れているのでそのようなミスはまずないのですが、引き直し計算は複雑なので慣れていない人はよく間違えてしまうのです。
もし、見落としたまま和解が成立してしまうと、本来は払わなくてもいいものを払うことになってしまいます。貸金業者も、わざわざ計算ミスを指摘して自分たちが損をするようなことはしません。
・相手にされないことがある
貸金業者によっては、そもそも本人が任意整理を申請した場合は、一律で断るとマニュアルで決まっていることがあります。そのようなことを決めている貸金業者は、法律や金融の知識がない素人と交渉するのは時間と手間がかかるだけ、と判断しています。丁寧に説明する義理もないので、最初から断ってしまった方がいいと考えるのです。そのようなところでは、任意整理を申し込んでも専門家に依頼してからご連絡ください、と返答されてしまいます。
専門家に任意整理を依頼するメリット
では、専門家に任意整理を依頼した場合のメリットを、具体的に考えてみましょう。
主なメリットは、以下のような点があります
・督促がストップする
・ほかの債務整理の方法と合わせた中から、ベストの方法を選ぶことができる
・時間や労力が少なく済む
・家族に知られないように手続きできる
・交渉の成功率が高い
それぞれ、詳しい内容を解説します。
・督促がストップする
借金の返済を滞納してしまうと、貸金業者から頻繁に督促を受けることがあります。そのことがストレスとなって、悩んでいる人もいるでしょう。中には、電話の音におびえる人もいるほどです。
任意整理を専門家に依頼すると、専門家から債権者に受任通知が送られます。これを受け取ってからは、本人に直接督促や取り立て行為を行うことは貸金業法などの法律で禁止されています。そのため、それ以降は督促を受けることがなくなるのです。和解が成立するまでの間は、督促を受けずに過ごすことができます。
・ほかの債務整理の方法と合わせた中から、ベストの方法を選ぶことができる
債務整理の方法には、任意整理以外にも個人再生や自己破産といった手続きがあります。それぞれ、メリットやデメリット、減額される割合などが異なるので、人によってベストの方法は異なります。
しかし、どの方法がベストなのかを自分で判断するのは難しいものです。この方法しかないと思っていても、実際には別の方法の方が適していることもあるのです。自分で判断しても、それが正しいとは限りません。専門家に相談して、客観的な判断をしてもらうことで正しい判断が下せるのです。
・時間や労力が少なく済む
任意整理はシンプルな手続きに見えますが、実はいろいろとやることがあります。取引履歴の開示請求から始まり、利息制限法に基づいた引き直し計算、過払い金があった場合はその請求、そして貸金業者との交渉など、やることは多いのです。こういったことは、インターネットで調べればある程度どんなことをすればいいのかはわかります。しかし、仕事終わりや休日などにしか空き時間がないと、その限られた時間で作業をしなくてはいけません。また、途中で不明な点が出てくると、調べ直さなくてはいけません。これには、かなりの時間と労力がかかってしまうのです。
専門家に依頼した場合は、これらの作業はすべて任せることができます。基本的に、依頼した後はすべて代行してくれるのです。自分でやることといえば、必要な書類があった時にそれを用意することと、専門家と和解条件について話し合うことくらいです。そのため、時間も手間も少なく済むのです。
・家族に知られないように手続きできる
借金のことが家族に知られている場合は、きちんと話をして債務整理をすることになるでしょう。しかし、中には家族に内緒の借金で債務整理をするという人もいます。この場合、個人再生や自己破産の手続きをすると、裁判所からの連絡などが届くうえ、裁判所にも何度か行かなければいけないので、家族に知られず手続きをするのは困難です。しかし、任意整理の場合は家族に知られるリスクはかなり低くなります。
家族に知られる可能性があるとすれば、貸金業者から郵便物が届いたり電話で連絡があったりした場合です。家族がいる時にそのような連絡があると、ごまかしきれないこともあるでしょう。
しかし、専門家に依頼した場合は、郵便物も電話連絡もすべて専門家に届くようになります。また、専門家から連絡がある時も、あらかじめ家族には内緒にしたいということを伝えておけば、電話を掛ける時間に配慮したり、事務所名が書かれていない封筒で郵送してきたりと、気を使ってもらえます。
・交渉の成功率が高い
任意整理は、ほかの債務整理とは違って裁判所を通さずに、直接債権者と交渉して借金を減額してもらう手続きです。そのため、交渉力がなければ借金を減額してもらうのが難しいのです。また、減額してもらえても原則利息カットではなく半減など、割合が低くなることがあるでしょう。交渉を成功させるために必要なのは、法律や債務整理に関する知識です。これがなければ、希望通りの条件で和解を成立させることができません。
専門家は、任意整理の経験も豊富です。もちろん、法律や債務整理についてもよく知っています。そのため、債権者に納得してもらいながらも、こちらが有利になるように交渉できるのです。任意整理を成功させたいなら、専門家に依頼しましょう。
専門家に任意整理を依頼するデメリット
専門家に依頼して任意整理の手続きを行った場合には、以下のようなデメリットが生じます。
・費用が発生する
・ブラックリストに掲載されてしまう
任意整理をすることで利息がカットされ、借金の返済総額は大幅に減少する一方で、デメリットがあることは避けられません。
専門家に依頼した場合の具体的なデメリットを解説します。
費用が発生する
専門家に債務整理の手続きを依頼した場合、ボランティアで行うわけではないので、当然ながら費用がかかります。
具体的な金額は事務所によって異なりますが、任意整理の場合は債権者1件に付き基本報酬がかかるのに加えて、減額できた金額の一部を成功報酬として支払う必要があります。
しかし、費用以上にメリットがあることも多いでしょう。
ブラックリストに掲載されてしまう?
任意整理をすると、信用情報機関に事故情報が記録されて、ブラックリストに掲載されてしまいます。
実際にブラックリストという分類があるわけではく、要するに事故情報が記録されていると新たな借り入れやクレジットカードの作成ができなくなってしまうのです。
ただし、自分で手続きをしても事故情報が記録されることは変わりません。
任意整理を専門家に依頼した際の費用と相場
任意整理を専門家に依頼した場合、どのくらいの費用が必要となるのでしょうか?費用の相場と、その費用を用意できない場合の対処方法について解説します。
任意整理の費用と相場
任意整理を専門家に依頼した場合の費用の相場は、以下のようになっています。
費用内訳 | 弁護士 | 司法書士 |
---|---|---|
相談料 | 0円~1万円 | 0円~1万円 |
着手金 | 1社あたり3万円以下 2社以上の場合、1社あたり2万円以下 | 1社あたり2万円以下 |
報酬金(基本報酬) | 1社2万円~ | 1社2万円~ |
減額時基本報酬 | 減額成功金額の10%以下 | 減額成功金額の10%以下 |
過払い金成功報酬 | 回収金額の10%~25% | 回収金額の10%~25% |
弁護士と司法書士では、料金に違いがあります。また、この料金は日本司法書士連合会や日本弁護士連合会から出されているガイドラインに沿ったものです。その金額は、必ずしも守らなくてはいけないというわけではないのですが、多くの場合はガイドラインに沿った金額を設定しています。そのため、表の料金から大きく離れることはめったにありません。ただし、中にはガイドラインを無視して高額な料金偽一定していることもあるので、注意してください。
今すぐ任意整理費用を用意できない場合の支払方法
今すぐに任意整理を依頼する費用が用意できないという場合は、どう対処すればいいのでしょうか?その場合は、以下のような方法があります。
・司法書士に依頼して手続きをしてもらう
・分割払いができるところに依頼する
・債権者への返済をストップして、その分を支払いに充てる
それぞれの方法について、詳しく解説します。
・司法書士に依頼して手続きをしてもらう
任意整理を依頼する専門家は、主に司法書士と弁護士のどちらかです。そして、上記の表を見ても分かるように、弁護士よりも司法書士の方が費用は若干安いのです。そのため、少しでも費用を安く収めたいのであれば、司法書士に依頼するのがおすすめです。
ただし、司法書士は140万円以上の借金には対応できません。その場合は、弁護士に依頼するしかないのです。これは借金の総額ではなく、1カ所の借金が140万円までということです。例えば、100万円ずつ3カ所から借りている場合は、そのすべてに対応できます。
・分割払いができるところに依頼する
任意整理の手続きを依頼する場合、着手金が必要な事務所ではまず着手金を支払う必要があります。ただし、中には着手金が無料の事務所もあります。はたの法務事務所は着手金は無料です。
着手金の額は事務所によって異なりますが、1社につき2~3万円程度としているところが多いようです。数社の任意整理をすると、あっという間に10万円以上になるため、一括で支払うのはかなり困難でしょう。
債務整理を受け付けている事務所のほとんどでは、分割払いを受け付けています。例えば、着手金が10万円なら、毎月1万円ずつ支払う形でもいいのです。任意整理の場合は、最長で3年、36回払いまでは受け付けてくれることが多いので、着手金が高額になっても安心できます。
・債権者への返済をストップして、その分を支払いに充てる
専門家に任意整理の手続きを依頼すると、そのことを債権者に通知します。その時点で、手続きが終わるまでは借金の返済は停止することとなります。ということは、今まで返済していた分余裕ができるのです。その分を、任意整理の費用の支払いに使うこともできます。
まとめ
・任意整理は、専門家に依頼することもできるが、自分で手続きをすることも可能
・専門家に依頼すると費用が発生するが、自分で手続きをする場合は費用の大部分が不要
・任意整理は、債権者と交渉して和解するための手続き
・自分で手続きをする場合は、時間や労力がかかる
・自分で手続きをすると、借金の督促は止まらない
・任意整理には、3~5か月程度かかる
・任意整理をする場合は、併せて過払い金がないかの確認も必要
・交渉によって和解するので、交渉力が重要
・専門家以外からの任意整理の申請は、受け付けてもらえないこともある
・専門家に支払う費用は、ガイドラインがあるのでほとんどは近い金額になる
・依頼した際に費用が払えない場合も、いくつかの対処方法がある
まだデータがありません。
クレジットでの買い物や、軽い気持ちでキャッシングを重ねるうちに借金が知らない間に増えることは、だれにでもあることです。
支払いが無理かなと感じたら、身近な法律家である司法書士にまずは、ご相談ください。
あなたの早めの相談が問題解決へのきっかけになります。
一人で思い悩まずに、司法書士といっしょに問題解決に向けてスタートしましょう。
また、司法書士は、不動産登記や商業登記、簡易裁判所で扱う事件についての代理等をしていますので、借金問題以外の法律相談もしています。
弁護士では、敷居が高いと感じている方も、気軽にご相談ください。