任意整理の手続きの流れと必要書類、メリットについても解説
返済しきれない借金をどうにか減額したいと思った時は、債務整理を検討しましょう。債務整理にはいくつかの方法があり、その一つが任意整理です。
この方法は、債権者と直接交渉することで、それ以降借金にかかる原則利息をカットしてもらうという手続きです。借金の返済額のうち、利息が占める割合は意外に大きいため、それをカットしてもらうだけでも返済額は大きく減額されます。また、その後の返済は今までの返済方法とは異なり、3年から5年ほどの期間で返済していく事になります。そのため、一度に返済する額も少なくなるのです。
しかし、任意整理の手続きをするにはどうしたらいいか、知らないという人も多いでしょう。基本的には、司法書士等の専門家に依頼をして、代理で債権者と交渉をしてもらうことになります。依頼をせず自分で行うこともできますが、交渉に成功する可能性はかなり低くなるでしょう。
また、任意整理はすぐに完了するわけではなく、およそ3カ月から6カ月ほどかかります。スムーズに進めるためには、あらかじめ具体的な流れを知っておく事が大切となります。
任意整理の手続きによるデメリットとよく誤解されるデメリット
任意整理をすると、いくつかのデメリットが生じます。そのデメリットとは、どのような事でしょうか?また、デメリットについてよく誤解されていることもあります。デメリットと誤解される点について、解説します。
任意整理のデメリットと対処法
任意整理で生じる主なデメリットは、以下の3点です。それぞれ、詳しい内容とその対処法について解説していきます。
デメリット⑴信用情報機関(ブラックリスト)への登録
任意整理をすると、信用情報機関にそのことが登録されてしまいます。この情報は事故情報として扱われ、登録されている間は信用情報を確認される手続きで不都合が生じます。このことを、ブラックリストに登録されるといいます。
ブラックリストに登録されてしまうと、クレジットカードの新規契約ができなくなります。また、それ以外にも消費者金融を利用したり、銀行でローンを組んだりすることもできなくなってしまうのです。携帯電話の本体を購入する際は、分割で購入する人が多いと思いますが、これもローンの一種なので審査があります。その審査にも通らなくなってしまうかもしれません。
ただし、これは任意整理に限らず、どの債務整理の方法でも登録されます。クレジットカード等の支払いが遅れただけでも、事故情報は登録されるのです。また、一度登録されたら一生残ると誤解している人もいますが、実際には完済してから5年ほど経過すれば、その情報は消去されます。その間の期間は、新たに借金をせずに生活するためのトレーニング期間
だと思って乗り切りましょう。そう考えれば、メリットにもなり得ます。
デメリット⑵元本を大きく減らすことは難しい
任意整理は、あくまでも借金にかかる原則利息をカットしてもらう手続きです。例えば、200万円の借金で年利15%なら、年間で30万円、1カ月当たり2万5千円ずつ借金が増えています。滞納した場合は、更に利息が増えていき、遅延損害金も払うことになってしまいます。任意整理はその原則利息をこれ以上増えないようにして、元本だけ返済すればいいように返済方法を変更する手続きです。そのため、元本はどうしても残ってしまうのです。
任意整理以外の債務整理の方法なら、元本も減らすことができます。しかし、裁判所を通して手続きをしなくてはいけないので、家族に知られずに手続きをするのが難しくなります。官報にも氏名や住所などが掲載され、保有している財産のほとんどは手元に残すことができません。
任意整理の場合は、家族に知られる心配も低いのです。また、個別に交渉するため、債権者を選んで手続きができます。官報にも掲載されることはなく、財産もそのまま残しておくことができるのです。
この債務整理による違いは、間違って覚えている人も多いので、注意してください。
デメリット⑶借金返済を続けていく収入が必要
債権者との交渉の際に必須となるのが、交渉が成立した場合にどう返済してくかという見通しです。そのためには、原則利息のカットさえしてもらえれば返済ができるということを証明できるだけの収入が必要です。
返済の期間や金額は、交渉によって決められます。そのため、返済の方法が収入と見合っていない場合は、返済の期間や1回ごとの金額を、計画し直す必要が生じることもあります。任意整理なら、それも可能なのです。
任意整理の手続によるメリットを理解しよう
では、任意整理をする事でどのようなメリットが生じるのでしょうか?その具体的なメリットについて、解説します。
任意整理の手続きをするメリットとは?
任意整理のメリットは、主に以下の3点です。
メリット⑴利息のカットにより支払総額が減額される
交渉によって原則利息をカットしてもらうので、元本は減りませんが利息はそれ以降支払う必要がなくなります。そのため、支払総額はかなりの割合で減額されます。また、その際は利息の利率によって、引き直し計算をすることもあります。
引き直し計算は、過去に遡って計算されます。利率の上限は利息制限法で定められているので、過去にその利率を上回っていた場合はその分を本来の利率で計算し直し、借金の残額などを算定し直します。
メリット⑵過払い金による減額効果!場合によっては余分に戻るケースも
任意整理をする際には、まず引き直し計算を行います。過去に利息制限法を超える金利で利息を支払っていた場合は、その余分に支払っていた分を元本の返済分として、計算し直します。そうすると、それ以降の利息分の支払いも変わってくるので、その分をまた元本分に充当していきます。その結果、元本がかなり少なくなっていくのです。
また、場合によっては元本の返済が途中で完了していて、余分に支払っていたということになるケースもあります。この場合は、余分に支払っていた分を返金してもらえるように交渉します。
メリット⑶返済期間組み直しで月々の返済を減額
任意整理をすると、その後は3年から5年かけて元本を返済していく事になります。これまでの返済が2年で利息分も含めて返済する予定になっていたとすれば、そこから利息分を減額した上で返済期間も2倍前後になるので、今までよりも毎月の返済額は大きく減ります。そうなれば、かなり余裕を持って返済できるようになるでしょう。
任意整理の1年間の利用件数
債務整理の手続には3種類ありますが、その中でも最も利用者が多いのは任意整理です。ただし、任意整理を利用する人の人数は明確には分かりません。裁判所などを通じた手続きではないので、司法書士等の専門家の事務所にある実績や自己破産等の他の債務整理の方法を利用した人数などから推測しなければいけないので、おおよその人数しか分からないのです。例えば、自己破産をした人の人数が10万人の場合、任意整理を利用した人数はおよそ200万~300万人と言われています。
そこから推測すると、任意整理年間で少なく見積もっても200万人以上、推定すると300万人から最大で500万人近いことになります。つまり、50人が集まるとそのうち1人か2人は手続きをしていることになります。
ただし、周囲で任意整理をした話を聞いたことがあるという人は、あまりいないでしょう。それは、ほとんどの方が秘密にしているからです。
任意整理の手続きの流れ
では、実際に任意整理を行う場合、その手続きはどのような流れで進んでいくのでしょうか?手続きの流れについて、解説します。
手続きの流れ
任意整理の手続きは、以下のような流れで進められていきます。
⑴専門家への相談
まずは、司法書士などの専門家に相談しましょう。自分の借金がどのくらいあってどのような返済状況なのかを、説明します。その状態で、債務整理を行うとしても任意整理で本当にいいのか、もしくは他の方法がいいのかなどをしっかりと検討して、その上で最も適切な手続きをすすめてくれます。
⑵委任契約
相談して任意整理がベストだと判断された場合、その着手金や報酬などを確認します。問題がなければ、委任契約を結びます。このとき、さらに詳しい状況を確認されます。返済が可能かどうかを確認する必要があるので、今回債務整理の対象としない債権者についても伝えなければいけません。時々、クレジットカードが使えなくなると困るからと任意整理の対象から外そうとする人もいます。しかし、信用情報が登録されると、任意整理をしなかったクレジットカードも使えなくなってしまうので、外す意味はありません。そういったことも説明されるので、すべて伝えるようにしてください。
⑶受任通知送付
委任契約を締結したら、債権者に対して受任通知を送付します。受任通知は、当日かその翌日には送付されます。債権者がその通知を受け取った時点で、督促の連絡や取り立てはストップします。それ以降、債権者とのやり取りで窓口となるのは、依頼した専門家です。そのため、直接話す必要がなくなるのです。また、借金の返済もその時点から一時的にストップします。
⑷取引履歴の開示請求
受任通知を送付するのと同時に、専門家は債権者に対して取引履歴の開示を請求します。これまでの借り入れと返済の履歴を確認して、今後の交渉や過払い金の確認などを行うのです。請求してから開示されるまで、通常は2~3週間ほどかかります。場合によってはその倍以上かかることもあるのですが、債権者は開示請求を拒否できません。必ず開示されるので、焦らないようにしましょう。
⑸引き直し計算
交渉を行う前に、取引履歴から利息の引き直し計算を行います。過去の返済で利息制限法の上限を超える金利を支払っていないかを確認し、借金の総額を正確にするのです。場合によっては過払い金が発生していることもあるので、慎重に計算しなくてはいけません。
⑹過払い金返還請求
引き直し計算をして、もし過払い金があった場合は先にそれを請求します。その結果借金がすでに完済していたことになり、余分に支払っていたことになった場合は、その分の返還請求ができます。
⑺和解案作成・和解交渉
交渉において、どのように話を進めていくかを打ち合わせて和解案を作成します。その内容を基にして、和解交渉を開始します。内容としては、今後の原則利息をカットして遅延損害金を請求しないことを要求します。残っている借金は、今後分割で返済していきます。その期間は、基本的に3~5年です。具体的な回数や1回の返済金額については、交渉次第で決まります。
⑻合意書作成
和解交渉が成立したら、両者間でその条件等をまとめて文書にします。それを、合意書と呼びます。契約書のようなものなので、違反すると契約が反故になってしまうこともあるため注意してください。
⑼支払い開始
交渉は専門家が代理で行っているので、和解が成立した場合はその内容について連絡してもらうことになります。同時に、新たに和解案として決まった内容に基づいて、改めて返済を開始することになります。
⑽完済
和解交渉の条件を守り、分割払いを続けていきます。返済は、おおむね3年から5年ほどの期間で行います。全額の支払いが無事終わった時点で、その借金は完済したことになります。
専門家に相談をしてから、交渉が完了して合意書を交わすまでにかかる期間は、おおよそ3カ月ほどです。しかし、これは最低限の期間で、交渉が難航したり着手金の支払いが遅れたりして長引いた場合は、6ヵ月以上かかることもあります。また、過払い金請求がある場合は、もっと長くかかることもあります。請求のために裁判を起こすことになった場合は、1年以上かかることもあるのです。
任意整理の手続きに必要な書類とは
任意整理に必要な書類は、以下の5点です。
・収入関係書類
現在の収入がわかるものが必要です。給与明細などは、直近の2~3か月分を用意しましょう。
・債権者一覧
債権者について、社名や各社の借入額、いつから利用しているのか、毎月の返済額はいくらくらいかを可能な限り詳しく記載します。
・これまでに受け取った利用明細
ATMから借りた、もしくは返済した時に明細が発行されます。それが手元にある場合は、用意してください。
・毎月の返済額や現在の借入金額が記載された資料
債権者一覧とともに、わかる範囲で用意してください。請求書や返済計画表なども、可能であれば用意しましょう。
・預貯金通帳
現在の預貯金がどのくらいあるのかを確認するために必要です。現在使用しているものは、すべて用意しましょう。
これ以外に、
・貸金業者との契約書
・業者からの督促状
等がある場合は、それも用意してください。
また、状況に応じて以下の書類が必要となることもあります。
・不動産登記簿謄本
これは、不動産を担保に設定している借金がある時に必要となります。法務局に行って申請すれば、取得できます。
・生命保険証書
担保として、生命保険の満期保険金や解約返戻金を設定している場合のみ、必要です。
・家計簿等、毎月の収入と支出がわかるもの
家計簿や出納帳、あるいはアプリなどの内容を印刷したものなどです。任意整理後に、毎月どのくらい返済できるかを知るために、必要です。無理のない返済計画を作成したい場合は、用意してください。
任意整理の手続きが長引いてしまうケースとは?
任意整理を依頼しても、手続きが長引いてしまうことがあります。それはどのようなケースか解説します。
ケース⑴ 着手金を分割払いにした場合
任意整理を依頼する際は、まず着手金を支払わなければいけません。着手金の支払いが終わって、初めて依頼が成立するのです。
着手金は、分割で支払うこともできます。着手金の支払いが終わっていなくても、依頼をした時点で債権者への返済はストップするので、その返済分を支払いに回すことができます。その支払いが完了しないと債権者との交渉ができないので、その分手続きが完了するまでの期間が長引いてしまうのです。
例えば、任意整理の手続きにかかる期間はおよそ3カ月が目安です。しかし、最初の着手金の支払いに4カ月かかった場合、それから交渉します。そのため、トータルで約7カ月かかることになってしまいます。
ケース⑵ 借金に問題がある場合
借金の内容に、問題があるケースでは交渉が長引くこともあります。例えば、不動産などが担保に設定されている借金の場合、任意整理に応じるよりも契約通りに不動産を売却したほうが、より多くの金額を回収できる可能性があります。そうなれば、なかなか交渉に応じようとはしないでしょう。
また、借金をしてから任意整理をするまでの期間が短く、あまり返済もされなかった場合は、最初から返済しないつもりで借金をしたのではないか、と疑われてしまいます。そうなると、貸金業者も利益がないので、交渉に応じてもらうまでに時間がかかることがあるのです。
ケース⑶ 中小の消費者金融から借金をしている場合
交渉に応じてくれるかどうかは、貸金業者によって異なります。しかし、傾向としては大手の消費者金融ほど、交渉に応じてくれる可能性が高いのです。そのため、アコムやプロミス、レイクALSAのような大手の消費者金融なら、任意整理の交渉を受けた経験も多く、スムーズに進みます。
問題となるのが、中小の消費者金融から借りた分です。任意整理の交渉経験が少ないという理由や、交渉に応じられるほど資金力が豊かではないという理由から、交渉に応じてもらえないケースが多くなるのです。
その交渉が成立するかどうかは、交渉する人の腕次第です。専門家が経験豊富であれば、交渉に応じてもらえる可能性は高くなるでしょう。そのため、依頼する場合はなるべく経験豊富な司法書士等の専門家を選ぶようにしましょう。
ケース⑷ 週払い金がある場合
過払い金があると、借金の元金そのものを減らすことができます。しかし、たとえ過払い金があったとしても、それを業者が返金することを認めるかどうかは別の話です。この過払い金も、交渉次第で金額が変わるのです。一切認めないというところはあまりないのですが、80%なら返還するなどの交渉をしてくる貸金業者もいます。
確実に返済を求めるなら、裁判で決着を付けなければいけません。しかし、裁判になると時間がかかってしまいます。交渉なら3カ月程度で終わるものも、裁判になると1年を超えることもあります。
そうなれば、その決着がつくまで任意整理の手続きはストップせざるを得ません。そうして、手続きにかかる期間が長くなってしまうのです。
専門家に相談するメリット
任意整理の手続きは、司法書士等の専門家に相談するのがおすすめです。なぜなら、専門家に相談することには大きなメリットがあるからです。
まず、相談することで自分が本当に任意整理をするべき状況なのかがわかります。もしかしたら、任意整理をしても返済できる見込みがなく、個人再生や自己破産をするべきなのかもしれません。自分だけではなく、専門家の意見も聞いて判断できるのです。
また、実際に依頼した場合はそれから返済の督促を受けたり、取り立てがきたりすることはなくなります。督促を受けると多大なストレスを感じることもあるので、そのストレスから解放されるのです。
任意整理の交渉を自分で行うと時間がかかり、成功率もあまり高くはありません。しかし、専門家に相談して依頼した場合は、交渉になれているので成功率も高くなります。さらに、任せたままに出来るので自分で何もしなくても交渉を進めてくれます。時間と手間を大きく減らすことができます。
まとめ
・任意整理をすると、信用情報機関のブラックリストに登録される
・ブラックリストからは、完済してから5年ほどで消去される
・任意整理をすることで、原則利息カットできる
・元本を減らすことは難しいが、過払い金があれば元本も減額できる
・任意整理手続きは、年間200万人以上、多ければ500万人以上が利用しているといわれている
・任意整理は、専門家に依頼してから交渉が終わるまで、1社につきおよそ3か月かかる
・着手金を分割で支払ったり、借金に問題があったりすると、かかる時間も長くなる
・中小の消費者金融は、交渉に応じてくれる可能性が低い
・過払い金請求がある場合も、それが終わるまで交渉ができないため期間が長くなる
まだデータがありません。
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