給料差し押さえを受けるとどうなる?リスクや回避方法を解説
カードローンやクレジットカードのキャッシング、あるいは住宅ローン等、借金をすると定期的に返済する必要があります。また、税金も決まった時期に支払うよう求められるでしょう。しかし、その返済や支払いができないときは、代わりに給料を差し押さえられてしまうことがあります。その際は、債権者や裁判所から会社へと差し押さえになったことが通知されてしまうので、周囲の人にも知られてしまうことになるでしょう。また、全額を差し押さえられるわけではないのですが、手取りが減ってしまうことになるので家族にも隠し通すのが難しくなります。
返済が難しくなってくると、もしかしたらこのまま返済ができなくなり、いずれ給料を差し押さえられてしまうのではと不安に思う人もいるでしょう。この記事では、いざという時に慌てないよう、差し押さえのリスクや実際にそうなるまでの流れ、解決方法などを詳しく解説していきます。
借金はいつから滞納になるのか
そもそも、借金というのはいつから滞納として扱われるようになるのでしょうか?まずは、そのタイミングを確認しましょう。
返済時期が決まっているもの
契約時に返済の時期が決まっている場合、その期限を1日でも過ぎた時点ですでに滞納している状態となってしまいます。例えば、毎月27日に一定額を返済するという契約の場合は、毎月28日の時点で返済がされていなければ滞納していることになるのです。契約の内容によって滞納の状態になるタイミングが異なるので、契約内容はよく確認しておきましょう。
特に、分割払いの契約であれば、一度でも滞納した時点で期限の利益を失うという契約になっていることもあります。これは、要するに残額を一括で返済しなくてはいけなくなるということなので、十分に気を付けなくてはいけません。
返済時期が決まっていないもの
返済時期が決まっていない借金の場合は、貸主が返還するよう求めた時が期限となります。その要求に応じることができないと、滞納していることになってしまうのです。
借金の滞納による給料差し押さえまでの流れ
実際に、借金を滞納してから給料を差押えるまでは、どのような流れで進むのでしょうか?その流れについて、解説していきます。
電話や郵便による催促
借金を滞納すると、まずは電話や郵便で返済するよう催促されます。中には、うっかり支払いを忘れている人や、日時を間違えている人などもいるからです。そのため、まずは「入金予定日を過ぎています」などの内容で催促をして支払う意思があるかどうかを確認するのです。その後、2回目も支払いがないようであれば、支払う意思がない、もしくはできない状態であるとして、電話での返済の催促や、自宅へと返済を求める通知を郵送します。
それでもまだ滞納している場合、今度は期限の利益の喪失、つまり分割での返済ではなく一括返済を求めることや裁判所に申立をして裁判となること、保証人がいる場合は代位弁済を求めることなどが通知され、法律事務所を通じた特則や債権回収会社への委託などがされます。
裁判所からの特別送達~民事裁判
上記のような状態になって、それでも返済がされなければ、裁判所の手続きへと発展します。その目的は差し押さえですが、いきなり行われるのではなく先んじて返済を求める手続きである支払督促を提起するか、民事裁判を行います。その際は、裁判所から郵送物が特別送達という形式で送付されます。これは、本人が受け取ったということを証明する送付手続きです。その後、裁判が行われて判決が出されるか、支払督促の手続きで仮執行宣言が出された場合に給料を差押えられることになるのです。
放置すると差押えが実行される
返済せずに滞納したまま放置していると、上記のような手続きを経て給料や財産などが差し押さえられます。その際は、執行裁判所という裁判所に提起します。それが認められると、会社には裁判所から給料を差し押さえるという通知が届き、会社がその指示された金額を給料から差し引き、債権者に対して支払います。
税金等を滞納した場合は裁判なしで差押えを受ける
上記の手続きは、消費者金融等の貸金業者から借金をして、その返済を滞納した場合の手続きです。税金を滞納した場合は、その手続きの内容も若干異なります。その場合は、滞納処分による差し押さえという扱いになります。この時、通常の借金の返済ができなかった場合とは、手続きの内容が大きく異なるので注意しましょう。
通常は、裁判所を通じて再建を確定させたうえで差し押さえを行います。しかし、税金を滞納している場合は、わざわざ裁判所で債権を確定させなくてもいいのです。督促状を送付する点は同じなのですが、その発行をしてから10日が経過して税金が完納されていなければ、給料、あるいは銀行の預金といった財産を差押えることができるようになるのです。
借金延滞で給料差し押さえされるときのルールとは?
給与の差し押さえも、いきなり全額を受け取れなくなるということはありません。また、ボーナスや退職金にも関係してくるため、そのルールについても把握しておきましょう。
差し押さえの上限金額は給料の1/4
給料は、会社に対して労働の対価として請求できる債権です。そのため、財産として扱われるので差し押さえの対象にはなります。しかし、生活をする上でも必要なので、銀行預金などの他の財産とは違って全額を、というのは問題があります。そのため、給料の4分の3は受け取ることができる、とされているので、実際に対象となるのは4分の1に限られるのです。これは、借金の返済が終わるまで毎月継続します。
手取りが33万円以上の部分は全額差し押さえ
生活に必要な金額は差し押さえないという観点から、4分の3は受け取ることができます。しかし、一定以上の収入がある場合はその限りではありません。そのため、手取りで33万円を超える部分については、たとえ4分の1を超えていても全額が対象になるのです。
ボーナスや退職金も差し押さえの対象
ボーナス、及び退職金も、給与と同様に労働の対価として支払われるものです。そのため、こちらも差し押さえを受けることになります。その際の割合や金額は、給料と同じように計算されます。
強制執行による差し押さえのリスクとは?
強制執行をされてしまうと、給料を差し押さえられてしまいます。その際のリスクについて、正確に把握しておきましょう。
差し押さえが確定するとどうなる?
借金を滞納しても、いきなり差し押さえをされるわけではありません。まずは、返済を促すために督促状が届きます。それでも返済しないまま放置していると、一括で支払うように請求書が届くのです。そして、それでも返済されない場合に裁判を起こされて、債権者の意見が認められると差し押さえができる状態になります。そして、改めて債権者が裁判所に差し押さえの申し立てをして認められることで、初めて確定します。
まず、その裁判を起こされた場合は、そのことを記した通知が裁判所から自宅へと送付されます。そして、強制執行となった場合は、会社にもそのことを通知されてしまうのです。会社は、第三債務者という立場にあたります。会社と従業員との間には、双務契約というものが結ばれています。会社は従業員に対して労働を提供するよう求める義務がありますが、同時に従業員に対して賃金を支払わなくてはいけないという債務も持ち合わせているのです。そういった、債務者に対する別の債権者を、第三債権者というのです。その債権に関することなので、当然ながら会社にも通知が届きます。その結果、会社に知られてしまいます。
また、給料についてはその分が引かれることになります。家族が給料を見ることがあれば、手取りが減ったということにも気づくはずです。それによって、家族にも気づかれてしまうでしょう。
財産以外に失うものは?
差し押さえの対象となるのは、現在持っている財産と今後得る予定の財産です。しかし、それだけとは限りません。会社に差し押さえをされたことが知られてしまうため、社会的信用も失われてしまうことになるでしょう。会社側も、差し押さえを受けることになるとそれに対応するための手続をしなくてはいけません。その分、手間をかけてしまうということを忘れないようにしましょう。
借金による給料差し押さえは家族や会社にバレる?
借金の返済ができず、給料を差し押えられてしまった場合、会社や家族には知られないようにできるのでしょうか?家族に知られたくない人もいれば、会社に知られるのは困るという人もいるでしょう。どのような形で知られるのか、あらかじめ知っておきましょう。
家族へは書類や給料の差し押さえでバレる
給料を差し押えられたからといって、そのことが家族に連絡されるということはありません。それなら隠し通すことができるのでは?と思うかもしれませんが、そういうわけにはいかないのです。
まず、借金の返済が滞っていると、消費者金融等の金融機関から督促状が届きます。その時点で、滞納していることが知られてしまうケースも多いでしょう。そこで知られずに済んだとしても、裁判所に強制執行を申し立てられてしまうと、特別送達という方法で民事裁判の提起をされているという通知が本人宛に届きます。その通知を見られてしまうと、借金を延滞していることが知られてしまうでしょう。
もし、それを見られずに済んだとしても、実際に受け取る給料の額があからさまに少なくなります。そのため、給料の額を見られる機会があると、すぐに知られてしまうでしょう。家計をどのように管理しているのかは各家庭で異なりますが、ほとんどの場合はおかしな点が生じてしまうため、家族に知られないようにするのは難しいのです。
会社に借金をしていることがバレてしまう
会社には、必ず知られてしまいます。なぜなら、会社が支払う給料は債権であり、その債権の扱いに関することなので会社にとっても無関係とはならないのです。この場合、会社は第三債務者という立場でこの件に関わります。
差し押さえが執行されると、裁判所から会社に対して通知が送付され、給料の一部を金融機関へと直接支払うことになるのです。そのため、会社に隠し通すことは不可能です。もしそのような事態になったときは、自分から会社にその旨を報告する必要はないのですが、ほとんどの場合は通知が届いた時点で確認をされることになるでしょう。
給料差押えを事前に回避する方法
給料を差し押さえられる事態になってから、それを解除しようとするのは大変です。そんな状況になった場合は、事前に回避する努力をするべきでしょう。その方法について、解説します。
債権者としっかり話し合う
差し押さえを受ける原因は、借金を返済できないことです。貸金業者も、返済を前提として貸しているのですから、返済しようという意思が見えない以上は強硬手段を取らざるを得ないのです。そのため、まずは返済の意思があることを示すためにも、貸金業者等の債権者としっかり話し合わなくてはいけません。借金は、放置していると徐々に利息も増えていき、返済が滞っている間は遅延損害金も加算されていきます。そのため、早期に話し合って今後の返済プランなどを立てていくことが大切なのです。
貸金業者と話し合って、今後の利息をカットしてもらい、返済に関しても分割払いを認めてもらう方法は、任意整理といいます。債務整理の一種であり、裁判所とは関係なく直接話し合うのですが、そう簡単に認めてもらえるものではありません。なるべく確実に分割払いや利息のカットを認めてもらうには、専門家に依頼して代わりに交渉してもらうのが効果的です。
税金等を滞納したときはすぐに役所に相談する
税金については、役所の管轄です。滞納するような事態になった場合は、なるべく早く役所に行って相談するべきでしょう。
役所の場合、交渉はできません。しかし、税金が支払えない場合の救済措置を利用できることがあるので、まずは役所に行き、現在の状況について説明しましょう。その結果、例えば納付期限に猶予を得ることができたり、分割での納付を認めてもらえたりすることがあります。相談する際は、通帳や現時点での借金額、返済状況、家計簿など現在の生活状況と納付ができない原因がわかるようなものを用意して持参するといいでしょう。
また、納付ができるようになる方法についても相談に乗ってくれることがあります。例えば、支出の中で減らせるところがないか家計を見直す手伝いをしてくれたり、あるいは改善のためにはこうするべきなどのアドバイスをしてくれたりするのです。家族、もしくは親戚に援助を頼むべきといわれることもあります。例としては、以前給料が多い仕事をしていた時に住みはじめた賃貸住宅にそのまま住んでいて、現在は給料が下がっているため家賃の支払いが苦しいという人がいたとします。その人は引っ越しが面倒だからとそのまま住み続けているのですが、現在の給料では相応の家賃とは言えません。その場合は、もっと安いところに引っ越すよう勧められるなどです。
債務整理をする
強制執行による差し押さえを避けるには、債務整理という方法が最も効果的です。なぜなら、債務整理の手続きをしてその通りに返済している間は、差し押さえを受けることがないからです。
債務整理は、借金を確実に返済するための手続きです。先ほども記載した任意整理も、その方法の一種です。他にも個人再生や自己破産などの手続きがあります。任意整理は、利息をカットしてもらい元本を原則3年で分割して返済する方法です。個人再生の場合は、元本を大幅に減額してもらい、それを3年から5年で分割して返済する方法です。そして自己破産は、借金の返済ができない状態であることを認めてもらい、その返済について免責許可を得ることで、借金の返済を免除してもらう手続きです。
自己破産以外の方法では、約束した通りに返済をすれば差し押さえを受けることはありません。ただし、それでも返済が滞ってしまうと、せっかくの手続きがなかったことになり直ちに一括返済を求められるようになるので、注意しましょう。また、滞納している税金は債務とは異なるため、こういった手続きはできません。
万が一、給料差押えを受けたときに止める方法
では、実際に給料を差し押さえられてしまったとき、それを止めるにはどうしたらいいのでしょうか?その方法について、解説します。
会社を辞める
会社を辞めてしまえば、差し押さえを受ける給料がなくなるため、止まります。ただし、それでは根本的な解決にはなりません。また、財産がある場合はそちらが差し押さえられることにもなりかねません。今後の返済も難しくなってしまいます。
個人再生または自己破産をする
債務整理のうち、個人再生と自己破産は裁判所を通じて手続きをします。そして、個人再生の手続きの申立をして開始決定が出されると、現時点での強制執行は中止されるため、差し押さえを受けることはなくなるのです。ただし、その分がすぐ受け取れるようになるわけではありません。手続きが終わるまでは、会社がその差し押さえ分をまとめておくか、あるいは供託という形で保管されます。その後、手続きが終わった時点でそれをまとめて受け取れるようになります。
自己破産の手続きをした場合は、やはり手続の開始時点で強制執行は中止となり、差し押さえも解除されますが、その分は手続きが終わるまで保管されます。そして、手続きが完了した時点で受け取ることができるのですが、これは同時廃止の場合です。自己破産をでは、一部が管財事件として扱われるのですが、その場合は破産手続きの開始と同時に強制執行が執行という扱いになり、その時点で差し押さえが解除され、すぐに全額を受け取れることになるのです。
同時廃止
同時廃止は、自己破産の手続きの1種です。破産者がほとんど処分するような財産を所有していない、もしくは特に重大な免責不許可事由に該当することがなければ、破産開始手続きの開始決定から財産の処分などを行わずに免責が決定されて、手続きが終了するというものです。
この場合、破産手続きの開始決定があった時点で強制執行は中止となり、毎月の給料から差し押さえられる分は債権者に渡されず、会社でプール、あるいは供託されることになります。財産の処分などがないため、破産手続きを開始してからおおよそ2~3カ月ほどで免責決定が出されます。その間、2~3回の給料は一部が天引きされてプール、もしくは供託されることになりますが、それ以降は差し押さえられることがなくなります。そして免責決定が出された時は、その差し押さえ分を受け取ることができます。
管財事件
自己破産の際に、処分する財産が十分にある場合、もしくは重大な免責不許可事由に該当する点がある場合は、管財事件として扱われます。これは同時廃止よりも複雑な手続きとなり、財産を管理するために破産管財人が選任されることとなります。管財事件となるのは、主に所有している財産の額が99万円を超えているケースです。破産管財人は、破産者の保有している財産を換価処分して債権者に配当する役割があります。
管財事件になった場合は、破産手続きの開始決定と同時に強制執行は失効となり、差し押さえに関しても即座に終了します。中止とは違い、失効なので完全にその効果は失われるのです。そうなった場合は、その翌月分から給料を満額受け取ることができるようになるのです。
この時の手続きは、全て破産管財人が行います。また、手続きの途中で再度差し押さえを受けるようになることもありません。
まとめ
・返済が期日から遅れた時点で滞納となる
・返済期限が決まっていない場合は、債権者から請求されて応じることができなければ滞納となる
・借金の延滞で給料を差し押さえられる場合、基本としては4分の1だけが差し押さえられる
・割合に関係なく、手取り33万円を超える部分は差し押さえられる
・差し押さえを受けると、会社に通知されるので会社には知られてしまう
・家族にも、通知の郵便物や手取り金額の減少で知られる可能性が高い
・差し押さえを回避するには、事前に債権者と話し合わなくてはいけない
・税金を滞納した場合は、役所に相談したほうがいい
・役所では、税金の納付について相談を受け付け、アドバイスもしてくれる
・給料を差し押さえられてしまったときは、個人再生や自己破産の手続きをすることで中止できる
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