債務不履行とは?損害賠償できる事例や対処方法を紹介
債務というのは、債権を持っている側の要求に応じて特定の行為やサービスを提供する義務のことをいいます。債務不履行というのは、その要求に応じず義務に従わないことです。例えば、借金をしている人が期日までにそれを返済しなければ、債務不履行になってしまうのです。また、レンタカーを借りた時にその契約通りの使用方法をしない、あるいは契約した日時までに返済しない場合も債務不履行となるのです。
この記事では、債務不履行に関して詳しく解説します。どのような種類があるのか、またその結果どのような請求をされるのか、混同されやすい不法行為とはどう違うのかといった点を解説していきます。そして、この場合は損害賠償をされることも多いのですが、その際はどのような請求をされるのかといった点についても詳しく解説します。
言葉自体は聞いたことがある人も多いでしょうが、その内容までは知らないという人もいるでしょう。この記事を読んで、正確な内容を知っておきましょう。
債務不履行とは?
債務不履行というのは、債務に従わないことをいいます。債務というのは、契約の内容に記されている義務のことです。例えば、お金を借りるという契約をした場合、貸した側は契約内容の通りにその返済を請求できる債権を持ち、借りた側は契約に従って返済しなくてはいけないという債務を負うので、それに従わなくてはいけません。しかし、それに従わないと債務不履行となってしまうのです。
このような事態は、まず契約がなければ発生することは基本的にありません。例外として、取引慣行などに従って債務があると判断されることもあるので、その場合は契約がなくても責任を問われるケースもあります。
債務不履行の種類とは
履行遅滞
期日までに返済ができない、つまり債務の履行が遅れることを、履行遅滞といいます。令和4年7月31日を返済期限とした融資契約を結んでいて、それを令和4年8月17日時点で返済していない場合などが該当します。
履行不能
債務を履行することがどうしても不可能な状態は、履行不能です。例えば、契約を結んで売買する予定の商品があり、それが引渡期日までに壊れてしまうなど完全な状態を失ってしまい、同等の商品がなく引き渡しができなくなるなどのケースです。
不完全履行
債務の履行自体は行うものの、その内容が十全でなければ不完全履行になります。例えば、商品を納めるという契約を結んでその数量の商品は納めたものの、商品を取り違えていた場合などはこれに該当することとなります。
不法行為とは?
不法行為については、民法にその具体的な内容があります。過失や故意を原因として、他人の持っている権利や法律によって保護されている利益などを侵害することをいいます。そのような事態になった場合、生じた損害についてはそれを賠償する責任が生じてしまうのです。
この場合、事前に契約がなくても損害賠償が生じる可能性があります。例えば、故意もしくは過失によって交通事故を起こした場合、運転者はけがをした被害者との間に契約はなくても、事故を起こした責任を負わなくてはいけません。そうなった場合、不法行為をしたことに対する責任が生じます。それに基づいて、請求されることがあるのです。
債務不履行と不法行為の違いは?
債務不履行と不法行為には、損害賠償が請求されることがあるという点で同じなのですが、実は裁判の際にはどちらによる損害賠償かによって扱いが違うのです。
もしもそれが債務不履行によるものであれば、まずは帰責事由を明確にしなくてはいけません。その債務不履行の原因が債務者に責任があるものか、確かめるのです。債務者に責任がない理由であれば、生じた損害に対する賠償請求が認められないこともあるのです。その際、そのことを立証する責任は債務者側にあります。
不法行為に関しては、故意もしくは過失によって事故が生じた場合となるのですが、その立証については傷害や死亡などの人身事故である場合を除いて、被害者側に責任があります。傷害・死亡事故の場合は、加害者側が自身の故意や過失ではなく、被害者か第三者に責任があるということを立証すれば、責任を問われない可能性もあります。
債務不履行で損害賠償が請求できるときはどのようなとき?
債務に従わなかった場合
相手が約束通りに債務を履行しなかった場合は、債務の本旨に従わなかったということになります。その場合、損害賠償請求は可能となります。債務不履行には、大きく分けて3つの異なる種類があります。どの場合でも、対象となります。
債務者に故意、過失があった場合
債務不履行となった場合、債務者に故意や過失がなかったのであれば、それは債務者が立証しなくてはいけません。その立証が出来なければ、生じた損害について請求することができます。不法行為責任であれば債権者側が故意や過失の立証をすることになるので、債権者の負担は債務不履行責任の方が軽くなります。
債務不履行を受けた際の対応とは?
損害賠償の請求
債務が履行されなかったために損害が生じた場合は、その損害分を賠償するよう請求できます。債務不履行によって通常生じたと考えられる損害の他、債務が履行されなかったことで失われた逸失利益も請求できる可能性があります。
契約の解除
債務不履行の際は、契約を解除して契約自体をなかったことにすることも可能です。
通常、契約というのは法的な拘束力を伴うものなので、解除するには双方の合意が必要となります。しかし、その契約に基づいた債務が履行されなかった場合は、債務不履行をした側の同意がなくても解除することができるのです。その場合、期間内に債務を履行することを催告し、それに応じてもらえない場合に解除することが可能になります。
また、債務の履行がすべて不能な場合、債務者が明確に債務履行をしないという意思を表示した場合、債務のうち一部分が履行できないか、その一部について履行しないという意思を明確に表示して残存する部分のみでは契約の目的を達することができない場合、契約の目的を達するためには特定の期日や一定期間内に履行する必要があると意思表示しているのに債務者がその期間内に履行しなかった場合、そのほか債権者が催告しても債務者が債務を履行せずに契約の目的を達するだけの履行がされる見込みがないと明らかになった場合のうちいずれかに該当するときは、催告をせずに契約の解除をすることが可能です。
契約の解除に伴い、その契約の代金を支払うなどの債務からは解放されることとなります。
完全な履行の追求
履行不能の状態になっていない限り、完全な形で履行することを求める追完が可能となります。例えば、購入した商品の数が契約によって請求したものと違った場合は、不足している分を追加で納品することを求めることができます。商品の種類が異なっている場合は、正しい種類の商品と交換するよう求めることも可能です。
強制執行
債務不履行の状態では、裁判所を通じて債務の履行を求めることもできます。その場合は強制執行となり、債務の履行を強制的に実現させることができます。
例えば、借金の返済がされなかった時には債務者に対して、自分の意思で支払うことを促します。しかし、それでも支払いがされなかった場合は、裁判によってその返済を求めることができるのです。判決が出されて支払うよう求められても支払いがなかった場合の最終手段として、強制執行が行われます。強制執行になると、相手の銀行口座の預金や勤務先に連絡して給与から支払われることとなります。
損害賠償請求される場合の債務不履行事例とは?
支払いの遅延
支払期日までに返済がされなかった場合は、遅延損害金が発生します。遅延損害金というのは、返済が遅れたことで発生する損害賠償金のことです。金銭債務において、履行遅滞が生じた際は遅延損害金が発生するということが、契約によって定められているのです。
金銭の支払いに関する債務では履行不能となることがまずないと考えられているので、支払いをしない状態が続く限り遅延損害金が発生し続けます。
不動産の引き渡し
不動産の売買契約をしたにもかかわらず、その不動産を引き渡すことができない場合は履行不能に該当し、損害賠償請求をすることが可能となります。不動産を売買するという契約では、対象となるのが特定の不動産に限られるため、その対象が他人の所有物の場合や、別の人にも売却している二重譲渡になってしまっている場合などは、契約に従った債務の履行が不可能となってしまいます。そのため、履行不能となるのです。
二重譲渡
何らかの品物を引き渡すという契約を結んだ際、その品物が1つしかないにも関わらず既に別の人と同じ契約を結んでいた場合などは、二重譲渡となり履行不能になるため、損害賠償を請求することができます。
例えば、中古の品物をネットオークションで販売したときに、2人に対して販売するという契約をして、一方には約束通り引き渡すことができなくなった場合などが考えられます。二重譲渡に限らず、約束した期日に引き渡しができなければ履行遅滞となって損害賠償の対象となります。
引っ越し時の物損
引っ越しの際、引っ越し業者に依頼して荷物を運んでもらったものの、作業自体は行ったもののその時に物品を破損してしまった場合は不完全履行となり、破損した物品に関する損害賠償請求が可能となります。原則として請求できるのは対象となる物品の価値以上までですが、パソコンが壊れて作業ができなくなるなど、それによって生じた損害についても請求することは可能です。
また、引っ越し当日に業者が来なければ履行遅滞、その日に来なければ契約した意味がないという場合は履行不能となり、どちらの場合も損害賠償の請求が可能です。
債務不履行による損害賠償請求に時効はある?
債務不履行によって損害賠償請求をされたときも、時効は定められています。ただし、債権の種類によってその時効までの期間は異なるのです。
一般的な民事債権における時効は、請求ができることを知ってから5年以内であり、請求ができるようになってから10年と定められています。ただし、人命や身体を侵害することに対しての損害賠償請求権についてはこの期間が異なり、請求できることを知ってから5年以内であり、請求できるようになってから20年以内とされています。
それに対して、商事債権という営利目的などの取引における債権については、請求できるようになってから5年となっています。
この時効については、債務の履行日を起算点としています。契約において、期日が守られなかった場合はその日から起算されることとなるのです。ただし、民法では期間の計算において初日を算入しない「初日不算入の原則」というものがあるので、実際にはその翌日からカウントされます。
まとめ
・契約では、債権と債務が生じる
・債権は請求できる権利だが、債務は契約内容に従う義務である
・債務に従わなかった場合は、債務不履行となる
・債務不履行に伴って損害が生じた場合、債権者は損害に関して賠償するよう債務者に請求できる
・不法行為は、過失や故意で他人の権利を侵害した行為等のことをいう
・損害賠償の請求にあたって、債務不履行の場合は債務者が帰責事由を立証する必要がある
・不法行為の場合は、被害者が加害者の責任を立証することになる
・債務不履行の時効は、請求できることを知ってから5年、かつ請求できるようになってから10年
・人命に関わる場合などは20年になる
・商事債権の場合は、5年で時効となる
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