債務整理と任意整理の違いとは?向いている人やメリット・デメリット、しない方がいいケースを解説!個人再生や自己破産との違いも解説
借金問題で困った時に解決する方法として債務整理がありますが、似たような言葉に任意整理というものもあるため、混乱してしまう人も多いでしょう。
債務整理と任意整理は意味が異なり、借金問題を解決する方法全般が債務整理、債務整理の中の1つの方法が任意整理という違いがあります。
下記の記事では、債務整理と任意整理のより詳しい違いや、任意整理に向いている人と向いていない人の特徴、債務整理のリスクについて解説します。
債務整理と任意整理の違いとはいったい何か?
債務整理と任意整理は似た言葉のため、混同されることも珍しくありません。
債務整理とは、借金問題を解決するための手続き全般を示したものである一方、任意整理は借金問題を解決するための手続きの一種です。
債務整理には任意整理と個人再生、自己破産、特定調停などが含まれていて、任意整理は債務整理のごく一部のことを指します。
債務整理の意味
債務整理とは、債務を整理する手続きのことです。
債務とは、特定の人に対し履行しなくてはならない義務として法律上定められた言葉であり、返済しなくてはいけないお金、つまり借金のことを債務といっています。
借金を正しく返済するのが難しい場合に負債を整理し、軽減することが債務整理です。
なお、債務を受ける権利を持つ相手を債権者といいます。
任意整理の意味
債務整理の手続きは、基本的に裁判所を通じて行うことから公的な手続きとなり、条件を満たす場合に債権者は従わざるを得ません。
一方、任意整理は法律の専門家を通じて行う手続きであるため、債権者が応じるかどうかは任意です。
任意整理は強制力がないため、条件について交渉をした結果、応じられない場合は拒否することも可能です。
任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いとは?
債務整理はいずれも借金問題の解決につながりますが、具体的なメリットやデメリット、手続後の影響などに違いがあります。
それぞれの手続の特徴
| 手続の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 任意整理 | 原則利息をカットし、3~5年の分割払いにする交渉をして返済の負担を減らす手続 |
| 個人再生 | 借金の元本を原則5分の1に減額し、住宅ローンなどを対象から除いて家を残すことができる手続 |
| 自己破産 | 借金の返済を免責にしてゼロにする手続 |
| 特定調停 | 裁判所に債権者との話し合いを仲介してもらい、債務者の借金を整理して生活の立て直しを支援する制度 |
それぞれの手続のデメリットの比較
任意整理のデメリットとして、以下が挙げられます。
・信用情報に事故情報が記録される
・ローン返済中のものは手放す可能性がある
・保証人に借金を肩代わりしてもらうことになる
個人再生のデメリットは、以下のとおりです。
・信用情報に事故情報が記録される
・ローンを返済中のものは手放す可能性がある
・保証人に借金を肩代わりしてもらうことになる
・官報に掲載される
自己破産のデメリットは、主に以下の点が挙げられます。
・信用情報に事故情報が記録される
・ローン返済中のものは手放す可能性がある
・保証人に借金を肩代わりしてもらうことになる
・官報に掲載される
・手続終了まで一部の職業に就けなくなる
・手続中は郵便物が破産管財人に転送される
・高価な財産は没収される
特定調停のデメリットは、以下の点です。
・取立てが止まるまで時間がかかる
・過払い金の返還を受けられない
・手続後も返済できないと差押えされやすくなる
・調停委員が債務整理の専門家ではない
・調停が成立しないことがある
どの手続きを選んだ場合もデメリットはあります。
しかし、人によってはデメリットにならないケースもあるため、過度に心配する必要はありません。
事故情報の登録についての違い
手続によって信用情報に事故情報が登録されますが、登録される期間は手続きの種類によって異なります。
任意整理の登録期間は、手続をしてから約5年です。
個人再生の場合は信用情報機関によって異なりますが、約5~7年登録されることになります。
自己破産の場合も同様に、信用情報機関ごとに異なりますが、登録期間は約5~7年です。
特定調停の場合は任意整理と同じで、約5年間事故情報が登録されます。
事故情報が登録されている間は、新たなクレジットカードの作成やローンを組むことができません。
事故情報の登録が残っている期間は、デビットカードやデポジット形式のETCカードを利用しましょう。
再びクレジットカードやローンを利用することができるようになるのは、事故情報の登録期間が過ぎてからです。
それぞれの手続きの期間
借金が減額されて対応が終わるまでの期間は、手続きによって違いがあります。
それぞれどのくらいの期間で手続きが終わるのでしょうか?
任意整理の場合は、手続きを始めてから債権者と交渉し、毎月の返済を減額して原則利息もカットしてもらうまでに約8カ月かかります。
個人再生の場合は裁判所に対して手続きを行うため、任意整理より少しだけ短く、かかる期間は5~6カ月ほどです。
ただし、事前に申立の準備を入念に行わなくてはなりません。
自己破産の手続きはさらに短く、申立から2~3カ月で完了しますが、申立のための準備期間は別に必要となります。
特定調停も裁判所に申立を行う手続ということから、やはり準備期間が必要です。
債権者のとの話し合いには3~4カ月ほどかかるでしょう。
手続き後の返済についての違い
手続きを終えた後の返済も、手続きごとに違いがあります。
任意整理の場合、借金にかかる原則利息をカットしたうえで、元本を月1回の返済で原則36回、最長で60回に分けて返済していくことになります。
個人再生であれば、借金の原則利息をカットしたうえで元本を原則5分の1に圧縮し、任意整理と同じく36回から60回に分けて返済していくことになるのです。
自己破産の場合は手続きを終えた時点で借金を返済する義務がなくなります。
したがって、手続きを終えた後に借金を返済する必要は一切ありません。
特定調停は任意整理と同じく、債権者との話し合いによって原則利息のカットと分割払いを認めてもらう手続きであり、やはり原則36回、最長で60回に分割して返済します。
任意整理が向いている人
任意整理は誰にでも向いている手続きというわけではなく、借金の総額や収入とのバランスによっては向いていない人もいます。
任意整理に向いている人が手続きをすれば、借金返済の負担が軽減されますが、向いていない人であれば、手続きをしても苦しいままかもしれません。
どのような人に任意整理が向いているのかを、具体的に解説します。
会社や家族に知られずに手続きをしたい人
任意整理は裁判所を通さないで手続きできるため、官報に名前や住所が載ることはありません。
また、手続きのために裁判所へ行く必要もないので、周囲に知られる可能性はかなり低いでしょう。
司法書士や弁護士などの専門家に依頼した場合、郵送物等も依頼した専門家の事務所あてに送ってもらうことが可能です。
連絡も全て引き受けてもらえるため、家に届いた郵便物や電話から家族に債務整理の事実を知られる心配はかなり低くなります。
債権者から督促を受けて困っている人
借金の返済を滞納していると、債権者から督促状などの郵送物が届き、電話でも督促を受けることがあります。
しかし、司法書士や弁護士などの専門家に依頼した場合には、債権者に受任通知が届くと、以降は電話による督促や督促状などの直接送付が禁じられます。
債権者から債務者に直接連絡を取ることが禁止されるため、全て専門家に届くようになるのです。
債権者からの連絡が無くなれば、いつ連絡が来るかわからないという不安やストレスから解放されるでしょう。
借金やローンの返済を長期間滞納している人
借金やローンなどを利用していて、返済を長期間滞納している場合には、任意整理のデメリットである信用情報機関に登録されてブラックリスト入りするという心配がなくなります。
なぜなら、返済を3カ月ほど滞納した時点で、信用情報機関には事故情報として登録されて、ブラックリストに入っているからです。
したがって、任意整理をしたからといって、改めてブラックリストに入る心配はありません。
気にすることなく任意整理の手続きができるでしょう。
借金の利息分が無くなれば返済の見通しが立つ人
任意整理の手続きは、借金の元本を減額するのではなく、将来にわたって発生する原則利息をカットする手続きです。
したがって、借金の額を大きく減らすことは難しく、返済能力がない人にはあまり向いていません。
しかし、原則利息がカットされるだけで返済できる見通しが立つという人の場合には、任意整理が向いているでしょう。
毎月の返済可能額よりも返済必要額が少しだけ多いという人なら、任意整理を利用するのに向いています。
保証人に迷惑をかけたくない人
借金の中には、連帯保証人や保証人が設定されているものもあります。
任意整理を含めた債務整理をした場合には、借金を減額するのではなく、保証人に請求するケースがあります。
しかし、任意整理の場合は全ての借金が整理対象となるわけではなく、手続きする借金を選ぶことができるため、保証人が設定されている借金を除いて整理の手続きをすることも可能です。
他の借金を任意整理した場合でも、保証人に借金を返済するよう請求されることはありません。
残したい財産がある人
ローンを利用して住宅や車、バイクなどを購入している人は、債務整理をする場合でもこれらを手放したくないと思うかもしれません。
また、他の財産の中にも、さまざまな事情から手元に残したいケースもあるでしょう。
任意整理の場合、特に財産を処分して弁済しなくてはならないという決まりがないため、財産は全て所有したまま手続きを進めることができます。
特に、住宅や車などは生活する上で必要な人も多いため、手放す必要のない手続きを選びましょう。
整理する借金を選択したい人
個人再生や自己破産の場合、特例を除き、整理する債権は選ぶことができません。
したがって、消費者金融からの借金や親戚からの借金、会社からの借金などすべてが対象になってしまいます。
しかし、任意整理の場合には、債権の中で整理するものとしないものを選べるため、整理して負担を軽くしたい借金と、全てきちんと返済したい借金を選んで手続きすることが可能です。
消費者金融の借金だけ整理して、親戚からの借金は整理しないということもできます。
過払い金があるかもしれない人
過去にグレーゾーン金利で借りていた可能性がある場合には、過払い金があるかもしれません。
任意整理の手続きをする時は、先に過払い金がないかを確認するため、取引記録を確認して引き直し計算をすることによって、借金がなくなったり、軽減できたりするケースがあるのです。
借り入れと返済を長期間にわたり繰り返してきた人や、クレジットカードのキャッシングを利用したことがある人は、先に過払い金がないか確認してみましょう。
任意整理が向いていない人
債務整理の中でもリスクが低そうだから任意整理にしたい、という考え方で任意整理を選ばないようにしましょう。
人整理は誰にでも向いているというわけではなく、収入や生活状況等によって向いていない人もいるのです。
どのような人が任意整理以外の方法を選んだ方がいいのか、下記にて詳しく解説します。
現在の収入では返済が難しいという人
任意整理は、借金の元本を減額するのではなく、原則利息をカットしてもらい、元本を3年から5年の長期分割返済にしてもらう手続きなので、必ず毎月一定額は返済しなくてはいけません。
現在の収入で、分割した返済分を支払うのが難しいという場合は、任意整理ではなく別の手続きを検討してみることをおすすめします。
長期分割すれば返済できるという前提で交渉するため、返済できないのであれば交渉ができないのです。
安定した収入がない人
任意整理をした場合、借金から原則利息をカットして元本を長期分割返済することになるため、毎月安定した収入が必要です。
毎月の返済が途絶えると、和解条件が取消となってしまいます。
その場合、手続きの意味がなくなるばかりか、一括返済を求められる可能性もあるのです。
病気などで失業してしまい、安定した収入がないという人の場合は、任意整理の手続きに向いていません。
安定した収入がない場合には、自己破産を検討することをおすすめします。
借金を返済したことが1度もない人
任意整理は、債権者と交渉して返済条件を緩和してもらい、完済を目指すための手続きです。
返済の意思があることを前提条件として交渉しますが、借金してから一度も返済の実績がない人の場合には、返済する意思自体がないものとみなされて、債権者が交渉に応じてくれる可能性は低くなってしまいます。
債権者は任意整理に無条件で応じるわけではなく、あくまでも任意で交渉に応じるため、返済の実績がない場合にはおすすめできません。
5年以内に再び借り入れをする必要がある人
任意整理をした場合は、信用情報機関に事故情報として記録されてしまい、5年から7年の間は新たな借り入れなどができなくなってしまいます。
新たに借り入れできるようになるのは、最低でも5年が経過して事故情報の記録が消えてからとなりますが、5年以内に新たな借り入れをする必要がある場合は、任意整理だけでなく、債務整理全般を利用できません。
債務整理以外の方法で、借金の返済をどうにか考えるしかないでしょう。
同じ会社を利用したい人
任意整理をした時は、基本的に5年間信用情報に事故情報として記録され、5年が経過した時点で再び借金ができるようになります。
ただし、任意整理をした会社では内部資料として名簿に保管されるため、5年が経過しても利用できなくなってしまいます。
一度任意整理をした人に再びお金を貸したり、クレジットカードを発行したりすることは滅多にないため、将来的に利用したいクレジットカード会社や貸金業者に対して任意整理をするのは避けた方がいいでしょう。
任意整理ができない人とその対処法
任意整理ができない理由と、理由ごとの対処方法にはどのようなものがあるのか、主な原因と対処方法を解説します。
借金額が大きすぎる
任意整理は、原則利息カットと元本を3年から5年の長期分割返済にするという手続きなので、借金の額が大きすぎる場合はあまり向いている手続きとはいえません。
借金額が大きい場合は、個人再生か自己破産のように、元本を減額できる、もしくはゼロにできる手続きの方が向いているでしょう。
マイホームの住宅ローンが残っている場合には、個人再生であれば特約を利用することによって、マイホームを手放さず手続きすることが可能です。
借金があり、収入がない
借金があるものの、離職したり病気で入院したりして収入がないという場合には、安定した収入があり、返済が可能な場合にしか利用できない任意整理の選択はできません。
収入がない場合にできる債務整理は、自己破産しかありません。
一定以上の価値がある財産は手放さなくてはなりませんが、代わりに借金を返済する義務は免責となるため、実質借金はなくなります。
ただし、借金額が少なく、収入がない状態が一時的なものであれば、任意整理も可能です。
債権者との和解が難しい
借りてからほとんど返済していない、滞納した時の対応が悪かったなど、債権者からの印象が悪く和解が難しい状態であれば、任意整理のために交渉を申し込んだとしても、受け付けてもらえないかもしれません。
裁判所を通じて行う自己破産や個人再生の手続きであれば、条件さえ満たしていれば債権者の意思に関係なく手続きできます。
状況に応じてどちらかを選択して手続きを進めると良いでしょう。
なお、どちらがいいかは、専門家に相談することをおすすめします。
債務整理のリスクを防ぐなら、専門家に相談するのが安心
債務整理を自分で行う場合、任意整理であれば交渉に失敗する可能性が高く、他の手続きでも書類不備や記入ミスが多くなるというデメリットがあります。
そのため、手続きにかなり時間がかるケースも珍しくありません。
専門家に相談して手続きを進めることにより、デメリットやリスクの多くは解消できます。
自宅に債権者や裁判所からの連絡が来ることもなくなり、家族に知られるリスクもほとんどなくなるでしょう。
また、任意整理の交渉に関しても、専門家の方が成功率ははるかに高く、有利な条件を引き出せる可能性も高まります。
相談だけなら無料というところでも、専門家に依頼するには当然費用が掛かります。
ただし、報酬は減額に成功した額の一部だけなので、大きな負担にはならないでしょう。
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まとめ
・債務整理と任意整理は似ているが、任意整理は債務整理の手続きの1つ
・債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産、特定調停がある
・任意整理は家族や会社に知られず手続きをしたい人に向いている
・長期間返済を滞納している人や、利息分がなければ返済できる人にも向いている
・借金額が大きい人には向いていない
・収入がない人は任意整理ができない
・ブラックリストに載りたくない人は家族や友人から借金をして返済する
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