督促状とは?催告状との違いや届いた時の対処法を解説
借金の返済を滞納していると、債権者から返済を求める書状が送られてきます。その書状にはいくつかの種類があるので、違いが分からないという人もいるでしょう。
しかし、違いを知っておかないと大変なことになるかもしれません。今回は、催告状と督促状の違いについて解説します。その違いと、督促状の対処法について知っておきましょう。
督促状とは
督促状は、債務者に対して返済を促すために送られる書面のことを言います。
督促状の内容は、宛先と発行日、差出人、表題、支払い要求、支払いがない場合の法的措置への言及となっています。
支払予定には、支払いを求める債権について、支払うべき金額がいくらなのか、期日がいつだったのか、いつまでに支払えばいいのかなどが書かれています。
支払いがなければ、支払い督促等法的手段での手続きに移行することも明記されています。
返済期日までに返済されなかった場合に、期限が切れていて返済がされていないと知らせるために発行される書面であり、約束を履行して実行を促す内容になっています。
督促状は、法的な強制力はなく、期日に返済されていないことを、早く支払うように促すだけのものです。
督促状は、滞納してしばらく経つと、複数回送られてきます。
もし、督促状が届いて無視していた場合でも、財産等を差し押さえられてしまうことはまずありません。
ただし、借金を長い間返済しないままにしておくと、遅延損害金が加算されてしまい、通常の利息以上の支払いを求められることとなり、一括請求や財産の差し押さえが発生するリスクもあります。
また、保証人や連帯保証人がいる場合は、督促状で反応がない時点で保証人などに請求されてしまう可能性もあります。
法的な根拠がないからといって、督促状は決して放置していいものではありません。
督促状を受け取った際は、すぐに開封して文面を読み、支払い方法などを確認して速やかに支払うようにしてください。
また、督促状には返済が遅れていることを知らせる意味があるだけで、法的な拘束力はないものの、
法的な働きがないというわけではありません。
督促状を受け取ることで、時効が先延ばしになるのです。
借金の返済には時効があるので、一定期間返済をしないままであれば消滅時効となり、返済する必要がなくなります。
しかし、時効は債権者が債務者に対して、支払いを請求すると延長されます。
基本的な時効の期間は5年間ですが、返済を求められた場合は6か月間延びるため、時効が完成するのは先送りとなるのです。
督促状も返済を求める行動の一種なので、督促状を受け取った時点で時効は6カ月先まで延びます。
ただし、督促状が発行される理由は、期日を過ぎても返済されない借金の返済を促すことであり、時効を延ばすために発行されることはまずありません。
催告状と督促状の違い
借金を滞納していると、債権者から返済するよう書状が送られてきます。
その書状にはいくつかの種類があるのですが、中でも違いが分からない、という人が多いのが催告状と督促状です。その違いについて、解説します。
内容証明郵便で送られてくるかどうか
催告状と督促状の違いとして大きいのが、内容証明郵便で送られてくるかどうかという点です。
内容証明郵便は、郵便局が「送り元と送り先、書状の内容と発送した時間」を証明してくれるもので、この記録は公的なものとして扱われますが、催告状はこの内容証明郵便で送付されます。
それに対し督促状は、一般的に普通郵便で送付されます。これによって、催告状を受け取った人はそれを受け取っていないと誤魔化すことができなくなります。これが普通郵便では内容も確認されず、本人が受け取ったという証明ができません。
内容証明郵便なら明確な記録が残り、直接本人に渡したということが証明できるようになるため、民法によって定められた、消滅時効の期間が6ヶ月延長されることになります。こういった目的があり、催告状は内容証明郵便で送付されるのです。
内容の厳しさが異なる
催告状と督促状を比較した場合、催告状の方が厳しく返済を迫る内容となります。
督促状の場合、最初は返済がされていないため同封の振込用紙で振込をお願いします、といった内容です。そして、回数を重ねていくうちに少しずつ内容が厳しくなり、最終的には法的手段も検討すると書かれます。
それに対して、催告状の場合は基本的に、最初から法的手段を用いて請求すると書かれてきます。督促状とは違って、法的手段を用いることが前提なのです。
催告状は、督促状よりも強い内容で書かれているため、催告状を受け取った場合はもう猶予がない状態といえるでしょう。
催告状と督促状の例文
告状と督促状、それぞれの例文を紹介します。
1回目の督促状は、以下のようになります。
「前略 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、○月○日付けにてご請求申上げましたご返済分(金○〇万円也)につきまして、現時点でお支払いの確認が取れておりません。つきましては、○月○日までに同封の振込用紙にて、お支払いいただけますようお願いいたします。
なお、本状と行き違いにお支払いいただいておりました際は、悪しからずご容赦願います。その他、ご不明な点等がございましたら下記番号までご連絡いただけますようお願い申し上げます。 敬具」
これが、2回目になると、支払期日につきまして「至急お支払いください」などとなります。
そして、無視を続けた場合は最終的な支払期日と共に、不本意ながら法的手段も検討せざるを得ない、と書かれるのです。
催告状の場合は、以下のような文面となります。
「催告書
当方は、平成○年○月○日、貴殿に対し、金〇万円を、利息年〇割、遅延損害金年〇割、毎月○日に〇万円以上を返済するという契約でお貸ししました。しかし、令和〇年○月○日分以降の返済分については、その返済の確認が取れておりません。つきましては、本書面到達後2週間以内に〇万円及びこれに対する平成○年○月○日から完済まで年1割の割合による利息及び遅延損害金年1割をお支払い頂きたく、本書面をもって請求致します。万一、上記期間内にお支払のない場合は、法的手段をとる用意のあることを申し添えます。」
このように書かれ、日付と債権者、宛先となる債務者の住所・氏名が書き添えられます。
催告書を無視した場合は、複数回送付されるのではなく一括請求に切り替わり、裁判所に訴えられて法的手段による回収へと切り替わるのが一般的です。
督促状が届いた時の対処法
では、督促状が届いた場合はどのように対処すればいいのでしょうか?
まずはその文書内に書かれている期限までに支払うことが重要ですが、それ以外の対処法について解説します。
まずは本物かどうかを確認する
督促状が届いた場合は慌てて支払う方も多いのですが、実は督促状のふりをした架空請求であるケースも少なくありません。
支払う前に、本物かどうかその内容をしっかりと確認しておきましょう。
支払えなくても無視をしない
督促状が届いたからといって、素直に支払えるのなら滞納することもないでしょう。その場合でも、督促状を無視して支払わない、ということはおすすめできません。
最初に督促状が届くのはまだ優しい文面なので、その段階で、支払うつもりはあるが現時点では支払うことができない、ということをしっかりと伝えておきましょう。連絡先が記載されているので、そこに電話をして支払えない理由を正直に話し、どうすればいいのかを話し合ってください。
場合によっては、支払期限を延長してくれたり、分割払いでの返済を提案してくれたりと打開策を講じてもらうことができます。
消滅時効を把握しておく
通常、督促状は返済を滞納したら送られてくるのですが、場合によっては返済をしなくなってから数年後に送られてくることもあります。その時に注意したいのが、消滅時効です。
督促状を受け取った時点で消滅時効が成立していることもあり、消滅時効が成立していると、その借金を返済する必要は無くなります。
しかし、その状態で支払いの猶予や一部弁済などの対処をすると、消滅時効の援用を行えなくなることもあります。そのため、消滅時効が成立している場合は返済の相談のための連絡をせず、時効の援用手続きをした方がいいのです。
本当に成立しているかどうかを確認したい場合は、司法書士等の専門家に相談しましょう。
無視をしてはいけない
例え支払えなくても、無視をしてはいけません。
無視を続けていると、やがて催告書が送られてきて裁判になってしまうことがあるのです。架空請求ではないかを確認したら、後はしっかりと対処するようにしましょう。
督促状で注意しておくべきこと
督促状を受け取った際に、注意しておくこととしては何があるでしょうか?
その注意点について、解説します。
悪徳業者が架空の督促状を送ってきている
督促状を送ってくるのは、債権者だけとは限りません。悪徳業者が、ありもしない借金の返済を求める督促状を送ってくることもあるのです。
その場合、お金を借りたという内容ではなく、サイトの利用料などの名目で請求してくるでしょう。
単に業者から送られてきているだけなら問題はないのですが、裁判所の手続きを悪用している場合は対応が必要です。というのも、そのまま放置していると、自動的に敗訴となって強制執行を受ける可能性もあるからです。
まずは本当に裁判所からの通知かを確認して、本物であればしっかりと対処しましょう。
税金の督促状は無視しない
貸金業者等から借りたお金の返済を求める督促状なら時効を待つという選択肢もありますが、税金の場合はそうはいきません。
税金を滞納して役所から督促状が送られてきた場合は、急いで対処する必要があります。
役所は、何度も頻繁に督促状を送ってくることは無く、到着して10日ほど経過しても何の返答もなければ、そのまま差押えの手続きを進めてしまうことがあるのです。
そのため、役所からの督促状が届いたら、すぐに連絡して税金を納めるための相談をしましょう。
督促状を放置するリスクとは?
督促状が届いてもそれに対応せず放置していると、どのようなことになるのでしょうか?
時効になるのを待っている人もいれば、単に厄介事から目をそらしたいという人もいるでしょう。
放置した場合のリスクについて解説します。
書面が徐々に厳しくなっていく
督促状が届いたとき、無視していれば諦めるのでは?と思っている人もいるでしょう。
しかし、貸金業者は貸したお金を回収するのも仕事なので、そう簡単にはあきらめてくれません。
督促状は何度も送付され、その文章も徐々に厳しいものとなっていくのです。先ほど例文でも言いましたが、最初は「返済が確認できません。○月〇日までに振り込んでください」と書かれていますが、その後は至急、などの文面に変わっていきます。
そして、最終的には「〇月○日までにお支払いいただけない場合は、法的手段も検討します」と変わっていき、この日付が最終的な支払期日となります。
また、滞納したことで期限の利益を喪失したとして、残債の一括返済を求められることもあるのです。
そうなると、分割でなら支払えるとなった場合にもそれに対応してもらうことは難しくなります。
裁判所からの通知が届く
督促状を無視していると、貸金業者は裁判所に訴える準備を行います。そうして、強制執行による差し押さえで強制的に返済させようとします。この手続きを進めている段階になると、裁判所からは特別送達という方法で自宅へと訴状、もしくは支払い督促状が届くようになります。
特別送達というのは、裁判所が重要な書類を訴訟関係人などに送付する際の方法で、これは、郵便法などに規定されたものです。
これも内容証明郵便と同じように、受け取ったという証拠を残すことのできる方法なので、誤配などで本人が受け取っていないという嘘を防ぐことができる方法です。
裁判が行われる
裁判所からの通知が届いても返済をしなかった場合は、実際に裁判が行われます。その裁判上で和解をしたり、時効が成立している場合は援用の手続きをしたりすることも可能です。
ちなみに、時効までのカウントは和解をした際にリセットされてしまうため、時効が成立している状態では和解に同意せず、時効の援用をしましょう。裁判は、たとえ欠席したとしても自動的に進められ、結審します。
その場合は、ほぼ確実に敗訴となってしまい、時効のカウントはリセットされてしまいます。
さらに、裁判所の結果も出ているため、強制執行ができる状態になります。そうならないようにするためには、裁判所から通知が届いたら無視せずに、司法書士等の専門家に相談するのがおすすめです。
強制執行が実施される
裁判を無視していると、たとえ貸金業者が嘘の主張をしていてもそれが認められてしまいます。
借金のうち半分は返済しているのに、借金を全く返済されていないと主張されてしまい、それを裁判所が認めて全額返済するように、という判決を出すこともあります。
そうなった場合、借金全額分の強制執行を受けることになります。そんなでたらめに応じる必要はない、と思うかもしれませんが、裁判所が出した判決は法的に認められ拘束力を持つものです。
そのため、一度出した判決を覆すことは簡単にはできません。そうなってからでは遅いということもあり得るので、裁判所からの呼び出しは無視せず、しっかりと出廷しましょう。
もし、裁判所で自分の言いたいことを言えないというときは、弁護士に依頼するといいでしょう。その場合は、弁護士が代わりに伝えてくれます。
借金問題でお悩みの方は専門家にまずは相談しよう
借金の問題で悩んでいる場合は、まず司法書士や弁護士などの専門家に相談しましょう。
そうすれば、債務整理などの方法で借金の問題解決ができるでしょう。
専門家に相談依頼するメリット
債務整理は、一般的に弁護士や司法書士に依頼して手続きを行います。その中でもおすすめなのが、司法書士に依頼することです。
債務整理をする場合は、その費用をなるべく安くしたいと思う人が多いでしょう。そのため、自分で手続きを行おうと考える方も一定数いるかと思います。その場合と、依頼した場合のメリット・デメリットについてまとめたので、参考にしてください。
司法書士 | 弁護士 | 自分で行う | |
---|---|---|---|
時間 | ◎ | ◎ | × |
費用 | 〇 | × | ◎ |
対応金額の制限 | △ 140万円を超える借金には 対応できない | ◎ 金額の制限なくできる | △ 特にないが、金額が 増えると手間も増える |
取り立て・督促 | ◎ 依頼を受けた時点で受任通知を 送付し、取り立てや督促が止まる | ◎ 依頼を受けた時点で受任通知を送付し、 取り立てや督促が止まる | × 交渉が終わるまでは止まらない |
自分で行うと上記の表の様に、交渉が終わるまでは借金の督促が止まりません。
また、任意整理の場合は交渉などの成功率も低くなります。その他の手続では、裁判所に提出する書類が複雑なため、書類不備で受け付けてもらえないことが増えてしまうでしょう。そのため、債務整理は可能な限り専門家に依頼した方がいいのです。
また、司法書士と弁護士では、司法書士の方が料金は安くなります。なるべく安い料金で債務整理を行いたいという人は、司法書士に依頼するのがおすすめです。
まとめ
・催告状は、督促状よりも強く返済を求める書状
・督促状は、支払がされないままだといずれ法的な対処をするといわれる
・催告状は、最初から法的措置を念頭に置いている
・督促状を何度も無視していると、様々なリスクがある
・督促状は、悪徳業者から送られてくることもある
・身に覚えのない借金の返済を求められた場合は、専門家に相談しよう
・裁判になったときは、欠席すると相手の言い分だけが認められてしまう
・悪徳業者の訴えでも認められるので、面倒でも出廷するべき
・借金問題で困ったときは、専門家に相談しよう
クレジットでの買い物や、軽い気持ちでキャッシングを重ねるうちに借金が知らない間に増えることは、だれにでもあることです。
支払いが無理かなと感じたら、身近な法律家である司法書士にまずは、ご相談ください。
あなたの早めの相談が問題解決へのきっかけになります。
一人で思い悩まずに、司法書士といっしょに問題解決に向けてスタートしましょう。
また、司法書士は、不動産登記や商業登記、簡易裁判所で扱う事件についての代理等をしていますので、借金問題以外の法律相談もしています。
弁護士では、敷居が高いと感じている方も、気軽にご相談ください。