過払い金の消滅時効は?10年以上でも返還請求可能な条件や起算点などを解説
法律事務所のCMなどが盛んに流れているため、過払い金について知っている人は多いでしょう。しかし、過払い金には消滅時効があるということは知らない人も多いと思います。過払い金は、一定の期間が過ぎると時効となり、請求できなくなってしまうのです。そのため、知らないうちに時効を迎えてしまい請求できなくなったという人もいるかと思います。
過払い金の消滅時効は、どういった条件で成立するのでしょうか?また、期限を過ぎた場合はどうやっても返還請求できないのでしょうか?過払い金の消滅時効が成立する条件と、期限を過ぎてしまった場合に返還請求するための方法について解説します。
過払い金請求とは
過払い金というのは、過去に借金をしていてその返済をした際、過剰に返済してしまった利息です。借金に対して発生する利息には法律によって上限が定められているのですが、かつてはその法律が2つありそれぞれ上限が異なっていたのです。現在は、利息制限法という法律によって利率の上限は15~20%となっているのですが、以前はそれに加えて出資法という法律によって、29.2%が上限になっていたのです。貸金業法が改正されたことで利息制限法に則った利率となったのですが、それまでの間に上限を超える金利で貸し付けていた場合はグレーゾーン金利となり、請求された場合は返還しなくてはならないと定められたのです。
過払い金請求は、その過払い金を返還するよう貸金業者に請求することを言います。その際は、かつての返済実績を法律上の上限金利で計算し直し、差額を計算して請求することになります。ただし、請求した金額が100%返還されるとは限らず、通常はその8割以下の金額を提示し、それで和解して欲しいと申し出があるので、そこから交渉をしていくことになります。また、場合によっては返還請求に応じないこともあり、裁判となる可能性もあります。
過払い金請求の時効期限
過払い金には、時効期限があります。その期限を知らなければ、いつまでに請求すればいいのかがわからないでしょう。過払い金請求の時効期限は、いつなのでしょうか?2つのパターンがあるので、それぞれ解説します。
過払い金の時効期限は最後に取引した日から10年間
過払い金は、グレーゾーン金利で利用していたローンを最後に取引した日から10年が経過してしまうと、時効期限になってしまいます。最後の取引というのは、借入をした日ではなく借入、もしくは返済をした日のことをいいます。つまり、すでにローンを完済している場合は、その完済した日から10年後が時効期限となるのです。例えば、完済した日が2016年8月16日だった場合の時効期限は、2026年8月16日です。完済後、その貸金業者との間に取引が一切なかった場合は完済から10年後ですが、さらに延長されるケースもあります。例えば、完済してからしばらく時間が空いて再び借り入れをしている場合、それが連続している取引として1つのものと判断されるケースもあるのです。しかし、どのくらいの期間までなら1つの取引と判断されるかという明確な基準はありません。それについては、原則として裁判所の判断にゆだねられることになります。
グレーゾーン金利は2010年6月に貸金業法が改正されてからはなくなっていますが、それから続けて取引があった場合はそれ以降であっても請求できるのです。そのため、2020年6月で一斉に時効期限を迎えている、というわけではありません。
10年未満でも時効となるケースもある
完済してからまだ10年が経過していなくても、時効となってしまうケースもあります。実は、時効期限が10年となっているのは完済したのが2020年3月以前の取引に限られます。民法が2020年4月に改正されていて、その中で時効期限の変更があったため、5年で時効を迎えるケースも生じるようになったのです。
改正された内容は、時効期限は権利が生じてから10年、もしくはその権利を行使できると知った日から5年が経過したとき、となっています。そのため、時効の権利が2020年4月以降に生じる場合、つまりそれ以降に完済した場合は、10年が経過しなくても過払い金を請求できるということを知った日から5年で時効期限となってしまうのです。
これは、その改正後に完済となる場合に限られます。そのため、2020年3月までに完済していた場合、たとえ過払い金請求ができるということを知っていても時効期限はこれまで通り10年となるため、2030年3月までは請求できるのです。
過払い金が請求できると知っているという方は、まず完済したタイミングを確認しましょう。改正前であれば、10年間は請求することが可能です。
10年以上経っていても過払い金の請求ができる場合
過払い金請求の時効期限は、原則として10年です。しかし、中には10年以上経過していても過払い金請求が可能なケースもあります。どのような場合、完済してから10年以上経過してからであっても請求できるのか、解説します。
返済中である場合
ただし、借金を返済中に過払い金を請求する場合は注意が必要です。過払い金の金額よりも現在借入れている金額の方が多い場合は、借入残高から過払い金を差し引いて、任意整理へと移行することになります。そして残った借金をどう返済するのか話し合うことになるのですが、任意整理になると個人信用情報機関のブラックリストに載ってしまうことになるのです。
同一の金融機関から借り入れを繰り返している場合
完済したのが10年以上前であっても、そこからさらに取引をしていた場合は10年以上経過してからでも過払い金を請求できる可能性があります。その場合、完済している取引と連続した一連の取引だと判断される可能性があるからです。一連の取引として認められた場合は、完済した時点ではなくその後の取引の最後の取引をした日から10年後が時効期限となるのです。
連続した取引と認められるには、まずその取引が完済した金融機関と同じところで、繰り返し借りているような状態であったことが条件となります。例えば、まとめて50万円を借りてその後はただ返済していったという場合は、完済の時点で取引が終わったものとみなされる可能性が高いでしょう。借り入れと返済を繰り返していた場合は、完済からある程度の期間で再び借り入れた場合に連続した一連の取引とみなされる可能性が高くなります。
ただし、認められるのはごく一部に限られます。どのくらいの期間なら一連の取引と認められるのかという基準は決められていないので、原則的には10年で時効になると思ってください。
貸金業者から不法行為を受けていた場合
過払い金請求は、法律上では不当利得返還請求と呼ばれています。不当利得というのは、正当な方法ではなく他人の財産や労務等で利益を得ることです。過払い金は、利息制限法に認められた範囲の金利を超える金利で貸付を行い、それによって不当に消費者金融が得た利得です。それを返還するよう請求するのが不当利得返還請求、つまり過払い金なのです。
過払い金の時効がもうすぐ成立してしまう場合の対応策
気が付いたら時間が過ぎてしまい、過払い金があるのにもう少しで時効が成立してしまうタイミングだった、ということもあるでしょう。そういった場合は、どのように対処するべきなのでしょうか?その対処法について、解説します。
貸金業者に過払い金返還請求書を送付する
まず、過払い金があることがわかっている場合はその貸金業者に対して、過払い金返還請求書を送付しましょう。これを送付した場合、1回に限り時効の進行を6か月間ストップさせることができるのです。ただし、それを貸金業者が受け取ったということを明確にするために、内容証明郵便で送付することを忘れないようにしてください。
なお、過払い金の調査のために取引履歴の開示請求をするだけでは、時効が止まることはないので注意してください。これを受け取っただけで安心してしまうと、結局時効が成立してしまうことになるでしょう。もうすぐ時効というタイミングであれば、請求をして受け取ってから引き直し計算を急いで行い、請求書を送付するようにしてください。
裁判所に訴訟を申し立てる
裁判所に訴訟を申し立てた場合は、確実に時効を止めることができます。請求額が60万円以下の場合は、少額訴訟を利用するといいでしょう。
申立をして、裁判所にそれが認められた時点で時効のカウントはいったん中断されます。そして、判決が出た場合は時効が10年間さらに延長されることになるのです。
ただし、その準備中に時効が成立してしまった場合はその時効が認められ、過払い金の返還請求をすることができなくなってしまうので注意しましょう。そのため、時効が迫っていることがわかっているのであれば、急いで準備を進めていかなければいけません。取り急ぎ過払い金返還請求書を送付し、それに対してのリアクションがなければ訴訟へと切り替えたほうがいいでしょう。
専門家に相談する
訴訟には時間も手間もかかるため、そこまでしたくはないという方であれば支払い督促という方法もあります。これは、裁判所から貸金業者に対して、過払い金を返還するよう請求してもらうという手続きです。そして貸金業者は、その請求を受け取ってから2週間以内を期限として、異議申立を行う必要があります。もし、申立をしなかった場合は請求内容を認めたということになり、強制執行手続きへと移行して財産の仮処分などが行われることとなります。異議申立があった場合は通常の訴訟へと切り替わるので、ほとんどの貸金業者は異議申立をするでしょう。
この督促を行うには非常に多くの手間がかかるため、司法書士等の専門家に相談して手続きをすることをおすすめします。自分で行おうとすると、書類に間違いがあった場合などは手続きをやり直すことになってしまうため、その間に時効が成立してしまう可能性もあるのです。また、貸金業者が早急に応じてくれないというケースもあります。そうなることを避けるためにも、専門家に相談してスムーズに手続きを進めるようにしたほうがいいのです。
貸金業者が倒産していると請求できなくなる?
最後の取引日から10年が経過していなくても、貸金業者がすでに倒産してしまっている場合は過払い金請求ができなくなります。最近は過払い金請求をする人が増えたことで、その支払いが負担となり経営不振となって倒産してしまう貸金業者もあります。大手の貸金業者であっても、武富士のように倒産する例があるのです。
たとえ倒産まではしなくても、経営が悪化してしまったことで過払い金請求に応じるための予算が少なくなってしまい、ごく一部しか戻ってこなくなる可能性もあるでしょう。
また、利用していた貸金業者がなくなっていたとしても、倒産したのではなく吸収合併により社名が変わっていることがあります。その場合、合併先の会社に過払い金を請求することができるので、まずは確認してみましょう。
過払い金返還請求の際に考えられる貸金業者側の主張
過払い金の消滅時効は、令和2年4月1日以降に取引が終了した場合は請求ができることを知った日から5年、あるいは最終取引日から10年のいずれか早いほうが経過した時点で成立します。そのため、最後の取引から5年以上が経過してから過払い金を請求した場合、貸金業者側は過払い金というものが世に周知されているため、取引終了時に超過利率によって請求できるということはわかっていたはずだから、5年が経過した時点で消滅時効は成立していると主張してくる可能性が高いでしょう。
現在でも、裁判では被告である貸金業者から、過払い金については大々的に抗告されていて、原告である債務者も知る機会は何度もあり、すでに周知の事実となっており、それを知りながら債務の弁済を続けてきたので、返還する義務はないということを述べてくることがあります。こういった主張は、裁判で認められるものではありません。しかし、法律や過払い金訴訟の実務、裁判例などを知らない人に対しては、譲歩を強いることができるかもしれないのです。
今後、それと同じ理由で消滅時効は5年で成立すると主張する貸金業者は多いでしょう。それに対して反論が必要になるため、不要な争点を避けるためにも5年以内に請求しましょう。
過払い金請求の際によくある債権者との争点
過払い金請求の際、よく債権者との争点になるのが、消滅時効の起算点についてです。リボルビング払い以外の取引においては、過払い金が発生した場合それを新たな貸付金に充当する合意があるため、消滅時効期間はそれぞれカウントするべきだと主張されることがあります。リボルビング払いについても、支払いが滞って貸付停止措置となった場合はその時点から消滅時効期間が進行すると主張されることがあります。
過払い金を回収できる可能性が高い人の条件
過払い金は、必ずしも回収できるとは限りません。回収できる人には、いくつかの特徴があるのです。1つも当てはまらないという人は、回収できる可能性も低くなってしまうでしょう。どういった人が、過払い金を回収できる可能性が高いのでしょうか?その特徴について、解説します。
利息制限法が改正された2006年1月以前に借入をしたことがある人
そもそも過払い金が発生していなければ、回収することはできません。過払い金が発生している可能性があるのは、グレーゾーン金利で借り入れをしていた人です。グレーゾーン金利は、かつて金利の上限を定めていた法律が2つあった時に存在していた、2つの上限の間となる金利のことを言います。これは貸金業法の改正によって利息制限法の上限金利までとされたため、それを超える金利で借りていた場合に過払い金が発生している可能性が生じるようになったのです。貸金業法は2006年12月に改正され、2010年6月に完全施行されました。そのため、2006年以前に借金をしていた場合、一部の貸金業者であれば2010年6月以前に借金をしていた場合に過払い金が発生している可能性があるのです。
過払い金の返金にはどれくらいの期間がかかるのか
では、過払い金は請求してからどのくらいの期間で返還されることになるのでしょうか?過払い金の請求には、まず調査をして貸金業者と交渉し、場合によっては裁判などで認められてから返金されることになります。それぞれの期間について、解説します。
相手と交渉を開始するまでの期間
過払い金を請求する際、自分で行うと期間はその人によるのですが、最短で請求するのであれば司法書士等の専門家に相談するべきでしょう。その場合、相談してから貸金業者等と交渉をする段階になるまでにどのくらいの期間がかかるのでしょうか?
司法書士等の専門家に依頼した場合は、まず過払い金が確かにあるかどうかを確認するために貸金業者等に取引履歴の開示請求をします。そして、発行してもらうまでの期間は早ければ2週間ほど、長ければ3か月ほどかかるのです。それを受け取って引き直し計算をするため、交渉を開始するまでにかかる期間は2週間から最長で3か月ほどになります。引き直し計算自体は慣れていればそこまで時間がかからないため、ほとんどは取引履歴が開示されるまでの期間が重要となるのです。
過払い金請求の交渉期間
過払い金を計算するために取引履歴の開示請求をして、その情報をもとにして司法書士等の専門家が引き直し計算を行い、正しい返済金額と過払い金について計算したら、その金額を請求金額として貸金業者へと郵送等で請求書と共に送付します。それを受け取った貸金業者が司法書士等と金額について交渉し、その内容に納得した場合は社内で決済をして返還される、ということになります。その場合、交渉を開始してからおよそ1カ月程度で返還手続きへと移行することになります。
ただし、交渉だけではまとまらなかった場合は、訴訟を起こして裁判へと移行することになります。そうなった場合、少額訴訟であれば追加でさらに1カ月ほどかかります。それでも納得がいかず通常の訴訟になって金額について争う場合などは、6カ月前後かかるケースもあります。
実際に過払い金の返金を受けられるまでの期間
交渉、あるいは裁判となって過払い金を受け取れる金額について決定した場合も、それですぐに過払い金を受け取ることができるというわけではありません。通常、和解となった場合はその2~4カ月ほど後の特定の日に、過払い金の返還分が入金されることとなります。これは何も支払いを渋っているというわけではなく、貸金業者等の社内の経理の手続きや返還分の予算を確保するための調整などが必要となるからです。
返還されるとき、司法書士等の専門家に依頼している場合は一度司法書士等の口座へと振り込まれます。そして、そこから専門家に依頼した費用が支払われ、残った額が依頼者の口座へと振り込まれます。そのため、自分の財布から専門家に支払う費用を出す必要はありません。
過払い金があるかどうか確認する方法
過払い金があるかどうかを確認するには、まず借り入れをしていた時期を確認しましょう。2010年6月17日以前に借り入れをしていた場合は、あるかもしれません。ただし、貸金業者によってグレーゾーン金利での貸付をしていた時期は異なるので、どの貸金業者から借り入れていたのか確認しましょう。
より詳しく知りたい場合は、専門家に依頼して調査してもらいましょう。その際は、消滅時効についても一緒に調べてもらうことができるので、安心です。
過払い金に限度額はあるのか?
過払い金は、過去の借入の返済で払い過ぎた分です。貸金業者にとっては不当利得であり、本来は不要な分まで返済金として受け取っていたので、請求されたら返済する義務があるのです。不当に受け取っているものなので、もちろん返還するにあたって限度額等はありません。借り入れが長期化していた場合は過払い金も多額になっている可能性が高いのですが、その全額を請求することができます。
まとめ
・過払い金請求は、返済時に金利が高すぎた時の払いすぎた利息を返還してもらう手続き
・過払い金の返還請求には時効があり、原則として10年間
・2020年4月以降に完済した場合、時効は最短5年間になる
・10年以上経過していても、過払い金の返還請求ができるケースはある
・時効が成立しそうなときは、返還請求書を送付すると6か月間停止する
・訴訟を起こすと停止し、判決が出るとまた時効まで10年となる
・グレーゾーン金利で借り入れをしていた場合に、過払い金が発生している可能性がある
※2010年以前の場合、過払い金が発生するケースがあります。お気軽にご相談ください。
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